vol.3 西村法律会計事務所 弁護士 西村 捷三 氏

大阪弁護士会副会長や、同人権擁護委員などを歴任されてきた弁護士の西村氏に、法律の観点から見たマンションの特徴や、資産価値向上を図るための管理組合規約・組織の在り方について、具体的なアドバイスを交えてお話いただきました。

西村捷三(にしむらしょうぞう) 弁護士
西村法律会計事務所(大阪弁護士会)所属。
大阪弁護士会副会長(元)はじめ人権擁護委員(現任)、大阪市人事委員(現任)などを歴任。「マンション管理の法律実務」(商事法務研究会)、「企業買収の実務と法理」(共著、商事法務研究会)、「変革の中の弁護士〜大阪における弁護士の活動・上下」(共著、有斐閣)など著書多数。

法律から見たマンションの特徴

法律的には、マンションは不動産です。不動産には土地、建物などがありますが、建物の中でマンションと一般の一戸建てが違うのは、上下左右に他人の権利が隣接しているということです。さらに、モノの所有という意味での権利関係だけでなく、人的関係も存在します。マンションの住民たちはひとつの社会を構成しており、その社会という財産を共有しているわけです。我々も建物だけを見るのであれば、民法の区分所有法という法律でマンションの問題を扱えるのですが、マンションが持つ社会的要素を考慮しなければ、実際には正しい判断はできません。

国の政策転換

国のほうでも、近年はそのような考え方に変わってきました。もともとは住宅を建物の観点からのみ考えていたのですが、平成18年に住生活基本法を制定し、「住みやすさ」を住宅の価値のひとつとして認識するようになってきました。ヨーロッパでは、石で家を造るということもあり、築100年以上という建物でも内部を改築して人が住み続けることが珍しくありません。古ければ価値がないとは限らない。そのことに国もやっと気付きはじめたのです。

マンション資産価値を向上させるために

マンションの資産価値について言えば、安心・快適で、住み続けたいと思えるマンション、次に住む人も「ぜひ買いたい」と思えるようなマンションが、中古であっても今後は資産価値が上がっていくでしょう。そしてそのためには、管理組合が自分たちのマンションの価値向上を目指して組合の運営や規約の定めを明確にしていく必要があります。
まずは管理規約がしっかりしていること。トラブルや未払い問題が起こった時、一定の範囲ですぐに訴訟できるように規約に書いておけば、そのたびに総会や大きな集会を開かなくてよくなります。未収金の回収くらいまでは、規約に明記しておくとよいでしょう
ペットの飼育もトラブルになりがちですが、飼育禁止と規約で定めておけば、裁判でも「飼育してはいけません」という判決になります。逆に、飼育が容認されているマンションでは、ペット飼育委員会などを作ってきっちりとマナーを守っていけば、それはそれでマンションの価値が上がります。当たり前ですが、他人に迷惑をかけないことが基本となります。
それから、住民の人間関係も、やはりマンション資産価値につながります。住民どうしのコミュニケーションが円滑で、マナーがよいこと。また、管理会社と管理組合の関係が良好であること。理事会では、独断的だったり陰で不正をしているような理事長が何年も居座っていないかどうか。それら一つひとつがマンションの住みやすさに関係してきます。
管理組合の組織がしっかりしていることも重要です。例えば、役員の選定や引き継ぎのルールが正当なものかどうかという点です。また、管理については、資金管理、建物の管理、書類管理、そしてリスク管理と、組合全体で検討し取り組むべきことが多くあります。
リスク管理を例にとると、火災保険は共有部分と専有部で保険が分かれていますから、共有部の保険には管理組合として入っておく、専有部は個人で入ってもらうことになります。マンションの駐車場で事故が起きたり建物で水漏れが起こったりして、管理組合が責任を問われるようなケースでは、第三者賠償保険に加入しておくことで損害賠償をカバーできます。保険に入っていないと莫大な支出になることもありますから、組合でよく話し合い、予め加入しておくことをおすすめします。
なお、管理に関する費用は、規約で定めておけば請求できます。定めていない場合、請求できる判例とできない判例がありますから、管理会社とよく相談して、便利な規約にしておくのがよいでしょう。

管理会社には法律の専門家がいる

管理会社は、管理組合の最も身近にいる存在ですから、気になることがあれば訊いてみるとよいと思います。大きな管理会社であれば法律の試験に通った人がいますから。専門家の知恵を上手く利用して、マンションの資産価値が崩れないように、維持管理を行なっていってください。
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