vol.5 NPO法人 プラス・アーツ 理事長 永田 宏和氏

教育、まちづくり、防災、福祉、環境、国際協力といった社会の分野において、アートの発想や創造力を駆使しての課題解決に取り組んでいる、NPO法人 プラスアーツ 理事長の永田宏和氏に「防災」をテーマに講演いただきました。

永田宏和(ながた・ひろかず) 1968年兵庫県西宮市出身。大阪大学大学院修了後、株式会社竹中工務店を経てまちづくり、建築、アートの企画・プロデュース会社「iop都市文化創造研究所」を設立。
2005年阪神・淡路大震災10周年事業で、防災訓練「イザ!カエルキャラバン!」を開発。NPO法人プラス・アーツ設立後、全国で展開。
2007年よりインドネシア、中米にもその活動を広げている。
『第6回21世紀のまちづくり賞・社会活動賞』受賞、
『第14回防災まちづくり大賞消防科学センター理事長賞』受賞

いつ起きても不思議ではない首都直下型地震

3月11日の東日本大震災は岩手県、宮城県、福島県を中心に甚大な被害をもたらしました。しかし、震災はこれで終わりではありません。首都の直下で発生す る「首都直下型地震」はいつ起きても不思議ではないと言われています。東京エリアの地盤は地震に弱い「軟弱地盤」であり、直下型地震が起こると、今まで経 験したことのない揺れになると予測されています。ですから、東京エリアに住む方は首都直下型地震に対する意識と備えを持っておくことが大切です。

マンション防災の知恵

大地震が発生するとマンションはどうなるのでしょうか。近年は耐震設計のマンションが増え、倒壊の危険は少ないと言われ ます。ただ、倒壊を免れたとしても想定されるトラブルが2つあります。1つはエレベーターの停止、もう1つは電気、ガス、水道などのインフラ※1の停止で す。つまり、生活を支える基盤が使えなくなるのです。なので、これらのリスクに対する備えが必要です。
まず備えておくべきものは、水と食糧です。特に高層階居住者の場合は、戸建て住宅居住者よりも多めに、最低1週間分の備蓄をしておきましょう。
水の備蓄については、風呂の水を溜めておいて洗濯などに使う、やかんに水を入れておく、ペットボト ルにすりきり一杯の水を入れて保管するなど、日常生活でできることが多くあります。そして、マンション内に非常用飲料水生成システムなどが備え付けられて いれば、事前に試運転をするなど使えるようにしておく、市販のろ過器で飲料水の作り方を学習しておくなど、さまざまな方法で水が確保できるようにしておき ましょう。それから、災害で断水してしまった場合は節水の知恵も有効です。3杯のバケツを使って食器の汚れを順番に落とす方法を使えば、節水に繋がります し、食器の上にラップを敷いて使えば食器を洗うための水をカットできます。さらに、覚えておきたいのは水の運び方です。災害時は給水車へ水を汲みに行き、 運ばなくてはなりません。低層階居住者の場合は、ポリタンクや段ボールにゴミ袋を被せて水を入れ、台車やスーツケースに載せて運ぶと良いでしょう。高層階 居住者の場合は、水を入れたゴミ袋をリュックサックに入れて背負うと運びやすくなります。また、災害時のトイレの不自由さは切実な問題なので、各家庭で万 全の準備が必要です。対策として、携帯トイレや手洗い用のウェットティッシュを準備しておく、マンション内のマンホールトイレが備え付けられている場合 は、活用できるようにしておくと良いでしょう。
食糧の備蓄については、ローリングストック法 をおすすめします。これは、常温保存ができる食糧を普段の2倍購入し、半分使い切ったら使った分だけ補充し、古いものから順に使っていくという方法です。 それから、昔ながらのおばあちゃんの知恵に学んで、漬物をつける、ベランダ菜園や根菜をストックしておくなども良いでしょう。また、災害時に温かいものが 食べられるように、カセットコンロとガスボンベをストックしておくことも災害時に有効です。ガスボンベの備蓄量の目安は4人家族1ヶ月分で12本程度です ので覚えておきましょう。
そのほか備えておくと良いものは、災害時に扉が開かなくなったときのためのバール、火災のための消火器や消火栓、怪我人などを運ぶ階段昇降用特製布担架などがあります。これらは準備するだけでなく、使えるように訓練をしておくことが大切です。
マンション防災として管理組合が事前に確認しておくべきこともあります。
ま ず、災害時の要支援者の避難や、怪我人が発生した場合の運搬方法は、毛布や専用担架を実際に使って搬送訓練をしておきましょう。それから、マンションが沿 岸部や河川近くに立地している場合、災害時の避難場所としてマンションのエントランスホールを提供するかどうか、提供する場合はオートロックの解除は誰が どのタイミングで行なうのか、事前に話しあい方針を決めておきましょう。そして、災害時は避難所に情報が集まるため、誰が情報を取りに行き、どのような方 法でマンション住民に伝達するかを決めておくと良いでしょう。このとき、伝達方法としては、電気が使えなくなることを想定し、掲示板に張り出す、回覧板を 回すなどの方法が役立ちます。

<参考サイト> 地震ITSUMO ・・・地震に関する体験記や次の地震に備える知識をまとめた防災マニュアルのアーカイブサイト

防災の日常化のすすめ

防災への取り組みは楽しめること、継続して行なうことが大切で、楽しいからこそ継続できるのだと感じています※2。
地域コミュニティが崩壊している地域では防災力も低下してしまいます。大震災で防災への意識が高まっている今こそ、防災への取り組みを見直し、楽しみながら続けられる「防災の日常化」を始めてみてはいかがでしょうか。
  • ※1 インフラとは下部構造の意味で、道路・鉄道・港湾・ダムなど産業基盤の社会資本のこと。
    最近では、学校・病院・公園・社会福祉施設など生活関連の社会資本も含めていう。
  • ※2 講演者が理事長を務めるNPO法人プラス・アーツは、2005年から「イザ!カエルキャラバン!」という子どもが使わなくなったおもちゃを持ちよって交換会を行なう「かえっこバザール」と防災訓練を融合した新しい防災教育のイベントを全国で実施しています。
このページの先頭へ
このページの先頭へ