管理組合の収益改善策

日常の管理や将来の修繕工事に備えて、管理組合の収支を健全な状態に保つことは管理組合の最大の関心事である。管理組合の収入は、管理費と修繕積立金、駐車場使用料、その他の使用料等からなる。収支を健全に保つためには、これら区分所有者からの収入によるところが大きいが、それ以外の収入を得ている管理組合もある。
管理費、修繕積立金以外の管理組合の収入(雑収入として計上されているもの)を手数料収入と販売収入に分けて調査した。

1.管理費、修繕積立金以外の収入(手数料収入)


表1

表2

金額割合で圧倒的に多いのは携帯電話基地局収入である(表1参照)。自動販売機設置収入なども一定額は見込めるものの、大きな収益とはなりえていない。電柱設置に伴う土地使用料などは、予め分譲主が東京電力などの電力会社と使用料契約を締結しているものがほとんどであり、管理組合が独自に収支改善策として選択できるものではなく、副次的な収益であると考えられる。また、地域による特色はみられない(表2参照)。

2.管理費、修繕積立金以外の収入(販売収入)


表3

表4

販売品目は自転車置場使用に伴う「自転車シール」の販売、駐車場使用に伴う「ゲートキー」の販売、後付オートロック設備の設置に伴う「オートロックキー」の販売など管理組合が共用部分を使用させるにあたり、使用料的な意味合いで徴収しているものがほとんどであった(表3参照)。
これら共用部分の施設、設備についてはメーカー等から鍵やカードを購入しており、その実費相当分の負担を求めているにすぎず、いわゆる原価が発生しているため管理組合の収入源とはなり得ていない。
地域別での特色はなく、むしろ駐車場設備、太陽光発電設備などのマンション個別の施設、設備の差によるものであると考えられる(表4参照)。

3.携帯電話基地局の設置(収入の増加)

手数料収入の中で金額割合の大きい携帯電話基地局設置状況は6%程度である(表5参照)。
 

表5
携帯電話会社各社の基地局設置件数は増加し続けており(表6参照)、それに併せてマンションでの携帯電話基地局設置も増加していると考えられる。
 

表6
携帯電話基地局の設置はすべての管理組合において導入できるわけではない。高層の建築物であること、近隣に基地局がないことなど、携帯電話会社により選定されることがまず必要である。また、携帯電話基地局を設置した管理組合でも、総会議事録を読むと、可決されるまでには多くの課題があることがわかる。
  • ①電磁波による健康被害への懸念、特に最上階の方の同意が得にくい
  • ②屋上に設置する基地局の重量の問題、建築士等により構造上問題がないかの確認が必要であること
  • ③近隣にさらに条件のよい建物が建築され、携帯電話会社から解約されるリスクがあること
    (一時的に収支が改善されても、将来における保証はないこと)
金額的なメリットは大きいが、これらの課題が解決せず、設置に至らないケースもあった。

4.管理員居室の賃貸住戸に変更(収入の増加)

少例ではあるが、多くの収入を得ている事例として、賃貸運営の事例がある。
住込管理方式は、旧来大型のマンションの管理仕様であったが、昨今の新築マンションではほとんど導入がない(表7参照)。その理由は次のようなものである。
  • ①ホームセキュリティや共用部分の機械警備が安価に導入できるようになり、普及がすすんだこと。
  • ②住込管理員の採用が非常に困難であること
    (定年退職後に転居する場の確保も困難であり、本人の負担が大きい職種である。)
  • ③住込管理員への居住者の期待は「24時間の対応」であるが、労働基準法上そのような勤務をさせることはできないこと。
当社実績でも、住込管理方式を採用していたマンションは機械警備と通勤管理方式の組み合わせに変更になっており年々減少している。

表7
この住込管理方式を終了した後に、管理員が居住していた居室部分について、管理組合が賃貸用住戸として運用し、収益を得ている事例が、当社受託管理組合において10例ある。そのいくつかの具体例を紹介する(表8参照)。
 
所在 竣工 戸数 事例詳細
東京 1970年代 20戸台 管理員居室と管理事務室が一区画であったため、水まわりの増設、警報機の移設など数百万円の費用をかけて居室部分と管理事務室を分割。居室部分は店舗として賃貸している。賃借人は区分所有者の一人であり、賃料の滞納などの不安はない。都心に位置し、賃料は20万円弱。この賃料で修繕費用などにも充当でき、管理組合会計は一般的な同規模のマンションよりも余裕がある。
埼玉 1980年代 40戸台 管理員居室が別棟にあり、管理事務室とは区分されていたため、居室部分の内装のみで賃貸化が可能であった。居室も2LDKと通常の住込管理員居室より広く、賃借人の入替はあるものの、空室で困ることはない。
神奈川 1980年代 70戸台 管理員居室は、分譲住戸と同じ区画にあり、管理事務室とは別になっていたため、内装のみで賃貸化が可能であった。
賃貸化を決議する総会の場において、賃借人の賃料滞納が不安視され、区分所有者が保証人となること、などの条件付でないと借りることができないなど厳しい管理規約となった。現在は、区分所有者の親族が賃借しており条件を満たしているが、将来的に空室となった場合に、同条件で賃借することができるかについて不安視する声もある。
埼玉 1990年代 200戸台 管理員居室は、分譲住戸と同じ区画にあり、管理事務室とは別になっていたため、居室部分の内装のみで賃貸化が可能であった。
賃貸借契約における条件などは特に設けておらず、賃借人の募集などはすべて地元の不動産業者に任せている。
大規模なマンションであり、総収入に対して賃料の占める割合は大きくなく、賃料や賃借人の募集について大きな問題になったことはない。
東京 1980年代 20戸台 管理員居室と管理事務室は別室であるが、トイレは居室側にあり、かつ扉が干渉している。扉を同時にあけると出入りする管理員と居住者がぶつかってしまう。また、居室に書類をおくことが想定されていたため、非常に狭い。現在、書類は集会室や倉庫に移動、管理員は集会室のトイレを使用している。
表8

管理員居室の収益事業化については成功事例からみると次の点がクリアされる必要があることがわかる。
  • ①管理事務室と管理員居室の水周り、警報盤などが独立している、または移設可能であること
  • ②区分所有者の賃借人に対する不安、賃料滞納に対する不安などを払拭すること

5.賃貸駐車場(収益事業以外)

携帯基地局、管理員居室については、一定の条件を満たす管理組合でのみ実現可能であるが、駐車場はほとんどの管理組合に敷設されている。最近では自動車保有率の低下にともない、駐車場の借り手がいない「空き駐車場問題」も発生している。
駐車場に空きが生じる場合、多くは次のような順序で使用者の拡大を検討する。
  • ①区分所有者の2台目の利用者募集
  • ②区分所有者から住戸を借り受けた賃借人に貸与
平成24年2月のマンションにおける駐車場の利用について国税庁の回答により、「区分所有者以外の賃借人に駐車場を直接貸与する場合、収益事業となる」ことを受けて、②の範囲に使用者を拡大しようとする場合には管理組合が賃借人に直接貸与するのではなく、区分所有者に駐車場を貸与し、区分所有者から賃借人に転貸する方法での管理規約改正の検討がなされている。空き区画の使用に関して収益事業会計を設け、申告すると税額や税理士報酬などの方が多額となり、駐車場使用料の実質的な収入が減少していまうことがその原因である。管理規約の改正により、税負担なく空き駐車場問題が解決できれば、管理組合の収益源となる。

6.賃貸駐車場(収益事業)

駐車場を外部(賃借人およびマンション居住外)に賃貸し、収益事業会計を設け、法人税の申告をする選択をした管理組合は、当社事例では10管理組合となっている(表9参照)。
 
収益事業会計を設けている管理組合例
所在 戸数 按分科目 按分時期 按分方法 納税
手続き
剰余金の
振替
対象
区画
契約書
の形態
神奈川 800戸台 管理費、電気、機械式駐車装置点検費、日常清掃費   期末 税理士計算 税理士 積立金
会計
固定 サブリース
神奈川 100戸台 ①管理委託費
②電気
①毎月
②2期目以降按分検討
契約台数 組合員 一般会計 固定 組合直接契約
東京 100戸台 管理委託費、修繕費、電気 毎月期末 契約台数 税理士 一般会計 変動 組合直接契約
東京 40戸台 - - - 外部委任 一般会計 固定 サブリース
東京 30戸台 電気、管理委託費
修繕、管理組合運営費
期末 駐車場面積按分×契約台数/総台数 税理士 未定 変動 組合直接契約
東京 20戸台 なし 未定 未定 税理士 一般会計 固定 組合直接契約
東京 10戸台 今期から 未定 未定 税理士 未定 固定 サブリース
東京 10戸台 今期から 未定 未定 税理士 未定 固定 サブリース
神奈川 60戸台 共用電気料
委託業務費
修繕費(機械駐補修)
毎月
毎月
計上月
見積額で定額
区画数
区画数
税理士 未定 固定 サブリース
大阪 80戸台 共用電気料
委託業務費
修繕費(機械駐補修)
期末 見積額で定額
区画数
区画数
税理士 未定 固定 サブリース
表9

法人税の申告をする場合の管理組合の課題は次のようなものがある。
  • ①決算終了前に仮決算をし、納税額を計算、その後に本決算をしなければならない。都合2回の決算処理が必要になり、また期間も短く、理事長や監事の負担がある。納付期限に遅れると延滞税が発生する場合があり、理事長の負担も大きい
  • ②管理組合の税務を取り扱う税理士が少ない(多くは、企業会計を専門とする税理士である)
  • ③税務上の解釈等について、管理会社に回答を求める管理組合が多い。管理会社は税理士法により税務相談は受けることはできず、日常的な相談先がない。

7. 管理組合による管理費滞納住戸の競落または買取

管理組合による賃貸住戸の運営という方法もある。
管理組合は管理費等の債権者であることから、抵当権の実行による競売に入札する場合は、管理費等の滞納額分を転売を目的とした不動産会社よりも低額で入札できる。その分落札しやすいとも言える。
管理組合は、取得した住戸をそのまま保有し賃貸住戸として運用する。
課題は管理組合を法人化しなければならないこと、管理組合法人に対して取得資金を貸し付ける金融機関があまりないことである。

管理組合の収支改善策は、事例にある通り、収益の大きい事例は駐車場の外部貸し、携帯電話基地局の設置など従来から収益例としてとりあげられてきたものが多いが、実績数はさほど多くない。
その他の施設利用料については全体の収支に影響を及ぼす金額のものはなく、しかも、個々の取扱いについては、収益事業にあたるか否かの見解が統一されておらず、税理士見解もそれぞれであり、結局は「所轄する税務署に確認」というところに帰結する。理事長が税務署に少額の利用料等について確認に行くのはあまり現実的ではない。管理組合が使用料等を徴収できる施設の種類は限定的でもあることから、駐車場だけでなく、その他の施設についても統一的な見解を求めたい。

8.電気料金の削減(省エネ工事)の実施 支出の削減

管理組合の収支改善策として、収入をあげることのほか、支出の削減を検討する事例も多い。
電気料金などを削減するために各種省エネ商品を導入している管理組合もある(表11参照)。
 
工事名称 内容
LED 共用廊下などの照明を蛍光灯からLED照明に変更
高圧一括受電 各入居者で東京電力と個別に電気の契約(低圧契約)をしているものを、マンション全体(管理組合)と東京電力でまとめて契約(高圧契約)することに変更することで、マンション共用部の電気料金を削減するもの。
蓄熱暖房器 東京電力の「電化上手」契約。エコキュートや電気温水器などの夜間蓄電式機器を使用する契約で、電気温水器などの夜間蓄圧式機器が設置されている場合のみ契約できる。
電子ブレーカー 電子ブレーカを共用部に設置することにより、設備容量にかかわらず実際に設備の稼動時の電力量をもとに契約容量を下げる契約。これにより低圧電力使用料金は変わらないが、通常契約しなければならない容量(Kw)契約より、少ない容量(Kw)の契約となり低圧電力基本料金を下げる契約をすることができる。
表11

首都圏は、東日本大震災を機に電気料金が値上げされ、管理組合でも多くの対応策がとられるようになった。関西圏は、阪神淡路大震災があったものの、震災後の電力不足は首都圏ほど深刻な状況にはなっておらず、電気料金値上げに対する危機感は首都圏ほどではないと考えられる。

マンション管理会社をお探しの方

お電話でのお問い合わせ・お見積もりはこちら 事業開発部(東京) 0120-54-4068
お電話でのお問い合わせ・お見積もりはこちら 西日本事業開発部(大阪) 0120-59-3931
分譲マンション管理の見直しに関するお問い合わせ・お見積もり
このページの先頭へ
このページの先頭へ