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2020.1.9

災害時に差がでる「自分専用オリジナル非常食備蓄」

防犯・防災

災害時に差がでる「自分専用オリジナル非常食備蓄」

備蓄は食べながら補充する「ローリングストック」

毎年3月は東日本大震災関連、9月は防災月間ということで、「備蓄」が話題になる月でもある。特に昨年は災害が多かったこともあり、災害直後の「非常食」の注文もかなり多かったと聞く。それだけ「防災意識」が高まっているのだろう。

とはいえ「非常食の備蓄」といっても、大概は「購入したものを備蓄スペースに置いた」だけ。つまり、非常食を非常食として扱っているという発想から、非常事態が起こらなければ日の目を浴びることのないものとしてストックされていることだろう。

しかし正しい非常食の扱い方はそうではない。「備蓄」として寝かせておくのではなく、実際に食べて消費し、新たな非常食を備蓄する回転が大切なのだ。それにより期限切れという無駄をなくし、何がストックされているか常に把握することできる。
このやり方を「ローリングストック」という。しかし実施している人は少ないのではないかと思う。

非常時は「日常の延長」、という考え方

そもそも「ローリングストック」という言葉自体、初めて聞いた人も多いことだろう。日本気象協会によると、ローリングストックとは「普段から少し多めに食材、加工品を買っておき、使ったら使った分だけ新しく買い足していくことで、常に一定量の食料を家に備蓄しておく方法」であると定義している。そして、そのポイントとなるのが「日常生活で消費しながら備蓄すること」であり、「非常食をとりあえず備蓄スペースに置いておくこと」ではない。まずは「日常生活で消費」することが重要だ。

とはいえ、なぜ備蓄した食料を「日常生活」で消費することが重要なのか。非常食なら賞味期限が5〜7年先だから、時々「賞味期限」を確認すれば良さそうなものだ。しかし、「いざ」という災害時は、「特別な数週間」ではあるが、実は「日常の延長」でもある。だからこそ、日常的に備蓄を消費し、「消費内容」や「消費の仕方」を自ら把握しておく必要があるのだ。

必要な「備蓄」は、人それぞれ異なる

災害時をシミュレーションして、「備蓄だけ」で数日間生活をしたことがある人はどれ位いるだろうか。筆者は、はからずも「備蓄だけ」で数日間生活することになった経験がある。緊急の在宅仕事が発生した際、天気が悪く、そして買い物に行かなくてもよい位の食料があるという状態だったので、「備蓄だけ生活」に3日間チャレンジしてみたのだ。

備蓄としては、「アルファ化米」に始まり、「缶詰」、「水」、「クッキー」、「野菜スープ」など、一通りのものは揃えてあるからまったく問題ないと高を括っていた。しかし、そこには思わぬ誤算があったのだ。一番の誤算は、防災関連で“必要といわれている備蓄”が、さほど必要ではなく、“さほど必要でないと思っていた備蓄”が自分にとって一番必要だったからだ。

筆者個人にとって一番必要だった備蓄は、実は「野菜ジュース」だった。「野菜スープ」は何とか備蓄していたが、「野菜ジュース」をこんなにも体が欲するとは思いもよらなかった。多分、体が「ビタミン」を欲していたのだと思われる。次に、体が欲していたのが「フルーツ缶詰」である。「ご飯」の糖分ではなく、「フルーツ」の糖分が必要だった。これは全く備蓄していなかったので、「備蓄だけ生活」の間、若干イライラしながら過ごすことになった。

また備蓄していた缶詰は「サバ缶」や「鮭缶」など、「魚」がほとんどだったため、すぐに飽きてしまい、「肉」や「豆」の缶詰があればと後悔した。
このように、実際に「備蓄だけ生活」を送ると、想定以外の食品を体が欲していたことに気づく。そしてこれが、実際の災害時には数日間、数週間も続くとなると、「自分に適した備蓄」が必要だと痛感した。日常時には「備蓄している非常食で十分過ごしていける」と思っていたが、実際の「非常事」をシミュレーションして非常食や備蓄品を食べてみると、想像した生活とはまったく異なっていたのだ。

災害時の「初体験」を減らすことが最大の防災

更に災害時をシミュレーションしたローリングストックが必要な理由としては、日常時から「非常食」に触れていること。災害時に「これはどうやって食べるの?」という疑問や戸惑いは、余計なストレスにもなるからだ。

例えば「アルファ化米」の場合、袋の中に「脱酸素剤」が含まれているので、必ず取り除いてからお湯またはお水をいれなければならない。しかし、「アルファ化米」を一度も食べたことがなかったら、誤って取り除き忘れてしまうこともあるだろう。

また、「非常食」は、スプーンなどが付属していてすぐに食べられる仕様になっているが、缶詰などの「備蓄品」にはそういったものが付属していない。そのため「備蓄スペース」には、紙皿や紙コップ、プラスチックカトラリーといったものも一緒に「備蓄」しておかねばならない。

そして「食料」と同じく大切なのが「簡易トイレ」の備蓄だ。トイレの排水管の破裂などで水が流れない事を予め想定して、きちんと「簡易トイレ」および「トイレットペーパー」類を備蓄しておく必要がある。先の震災での被災体験で、一番困ったことの上位に「トイレットペーパーが売り切れていたこと」などを挙げる人も多かった。本来なら「簡易トイレ」の使い方も、予め体験しておく方が災害時には困らない。つまり、災害時の「初体験」を減らすことこそ、最大の防災でもあるのだ。

非常時こそ「日常生活でのこだわり」を満たす

3日間の「備蓄だけ生活」を終えて、通常に戻ってみたところ、確かに普段から「野菜ジュース」を頻繁に飲んでいることに改めて気付いた。非常時をシミュレーションしなければ、何気ない「こだわり」には、なかなか気付けない。

このようなこだわりは、食事以外の面でも多いように思われる。例えば、毎日髪の毛を洗わないと嫌という人もいれば、フロスで歯を磨かないと気が済まないという人もいるだろう。リップクリームがないとすぐに乾燥する人もいれば、ハンドクリームがないと困る人もいるかもしれない。個人的には乾燥に弱く、「リップクリーム」「ハンドクリーム」「目薬」「喉スプレー」「マスク」などを多用していることにも気付いたため、「非常食」などの「備蓄スペース」にこれらを常備しておくことにした。

災害時に、このような「独自のこだわり」が叶えられない時こそ、ストレスが大きく溜まる原因にもなる。自分はどのような「こだわり」を持っているのかを確認する意味でも、災害時をシミュレーションしたローリングストック体験は必ず実施をして、「オリジナル備蓄」を日常から心がけておこう。

この記事の執筆者

田口 歩

ビジネスモデル・デザイナー®。(株)ベネッセコーポレーションでの編集業務、オルビス(株)での、マーケティング、広報、上場準備業務を経て独立。コレクティブハウスでの居住経験を元に、多世代型シェアオフィスを企画運営。現在は、オランダにて、メーカー社外広報、起業家支援コンサルティング、移住相談を実施。

田口 歩

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