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2019.2.18

マンションの震災訓練が、重大な間違えを植え付けている?

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「震災」と「火災」、よく考えれば違うことに気づくのに、マンションの防災訓練では、これをごちゃ混ぜで実施しているケースが多い。震災も火災も、同じ災害なのだが、どんな状況からどう守るのかは異なる。当然、対応すべき行動も違ってくる。誤った避難訓練を植え付けることは、むしろ被害を拡大させてしまうことになりかねないのだ。

震災訓練が、「あだ」になる

あなたのマンションの管理組合でも、こんな流れで震災訓練をスタートさせてはいないだろうか?
理事長 「今年は消防署が起震車を出してくれる。昨今大きな地震も多いし、震災対策も重要だろう。今回は、いつもの通りの火災想定の防災訓練ではなく、震災訓練を実施しよう。」
防災担当理事 「では、スタート時の館内放送は、『地震です。みなさんエレベーターを使わずに階段を使って避難し、エントランスに集まってください。』に変更しますね。エントランスに集まってもらい起震車を体験し、消防署から震災対策のお話をしてもらいましょう。」
どこにでもありそうなやり取りだ。熊本地震・大阪北部地震、そして北海道胆振東部地震と震災も相次いだ。マンションの防災訓練を火災訓練から、震災訓練に変更したマンションも多いと思う。しかし、意外と多いのが、この「火災です」を「地震です」に変えただけの館内放送。実は、これでは、住民に間違った行動を刷り込むことになってしまいかねないのだ。

震災時の初動は、フロアー単位の安否確認

結論からいえば、大きな間違いは、震災訓練で住民を一斉にエントランスに集合させてしまうことにある。
運営側のあいさつや消防署の講話もあり、どこかのタイミングで集まってもらう必要はあるが、地震が発生したら、最初に「階段を使ってエントランスに集合する」という刷り込みは、やってはいけない。
炎や煙から逃げるために下に降りるのと異なり、地震の際の初動は、まず自分の身を守り、揺れが収まってからフロアごとの横の動きで、隣近所の安否確認を行うことが重要だ。
家具の下敷きになった人はいないか、火にかかった鍋がひっくり返り火傷を負った人はいないか、玄関ドアが歪み自宅から出られなくなった人はいないかなど、フロア単位で安否確認を行い、隣近所で助け合うことが最優先される。
エントランスに集まってもらえれば、管理組合で備蓄していた防災食などを分配できるという考え方をする人もいるが、備蓄品の分配は、発災期に行うことではない。一日後などの被災生活期に入ってからで十分なのだ。

訓練の誤った行動。被災関連死にさえつながる

エントランスに集合し点呼を取ることを安否確認だと勘違いしているケースもある。地震発生時、点呼を取ったら、高層階に住む独り暮らしのおばあちゃんがいない。様子を見に行くには、階段を歩いて登らなくてはならない。もし家具の下敷きになって身動きができないでいるとしたら、救出するまでにどれぐらいの時間を要するのだろう。
阪神淡路大震災時の神戸では、火災現場からたくさんのご遺体が見つかった。しかし司法解剖の結果、ほとんどの方の肺に“すす”は入っていなかった。つまり焼死ではなく、崩れた家や家具の下敷きになり、火の手が回るよりも先に息を引き取っていたのだ。
つまり、いかに早く助け出すかが重要となる。その時間の目安は15分以内。時間との戦いとなる。
震災訓練でエントランスに集合と刷り込まれた高齢者が、下までがんばって降りてきたとしよう。訓練ではなく実際に地震が来たら、電気やエレベーターが復旧するまで、今度は自分の部屋に戻ることができなくなる。いつも携帯している発作を抑える薬を置き忘れることもあるだろう。下まで降りてきた高齢者が、集会室で不安な一夜を明かすことになりかねないのだ。
「地震です。階段を使ってエントランスに集まってください。」という誤った訓練ではなく、マンションの特性を踏まえ、配慮した訓練プログラムを作る必要がある。

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