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2019.4.24

2つの疑問を解明──マンションの大規模修繕工事

改修工事

2つの疑問を解明──マンションの大規模修繕工事

「大規模修繕工事」といえば、マンションにお住まいの多くの方々にとってはよく耳にする言葉であるはずで、「マンションは、劣化してしまうから10年~15年周期で大規模修繕工事をしなければいけない」と答える方は多いことでしょう。もちろん、それは正解です。

それでは一つ突っ込んで、「大規模修繕工事とは何か?」と、その意味や定義を聞かれたら、あなたはどのように答えるでしょう。実は、この大規模修繕工事とは、マンションならではの言葉なのです。

なぜ──修繕工事ではなく、全部まとめての大規模修繕工事なのか。

なぜ──10年~15年で工事をするのか。

この2つの素朴な疑問に、正直、私は明確な答えを持っていません。

「外壁のペンキは10年ももたずに劣化してしまう。屋上防水の保証は10年だ。だから定期的に工事を実施し、建設当時の性能を取り戻しておく必要がある」と、管理会社の担当者が説明し、またいろんなセミナーでも専門家が、同様に発信する。そしてほとんどの管理組合でも、そんな考え方に沿って大規模修繕工事を行っている。

建築物は完成時から劣化は始まるもので、屋根、屋上、外壁などすべての部位が劣化していきます。しかし、マンション以外の日本中の建築物は大規模修繕工事を10年~15年周期で行っていないのです。オフィスビル・商業ビル・公共建物そして戸建て住宅などをみても、10年~15年周期で改修工事を行うことはあまりありません。ではなぜ、マンションでは大規模修繕工事を行うのでしょう。

建築物は、補修・修繕などのメンテナンスを適時・適材・適所に実施しておけば、建物全体を丸ごと修繕工事する大規模修繕工事を行う必要はありません。部分的な修繕工事でそのほとんどを済ませるとことは可能です。それならマンションも同じように、部分的な修繕工事で済ませばいいはずです。それについて私は可能だと考えています。

少々乱暴な意見を承知で述べますが、例えば、外壁の塗装は10年、屋上の防水は15年周期で計画する。防水工事を30年間で2回の工事で済ませてしまうという考え方があっても良い。仮設足場が必要な工事は必ずまとめて行うが、仮設足場が必要でない工事は必ずしも同じタイミングで行う必要はない。それぞれの部位で、同じ材料なら修繕時期に合わせる。また南側・北側など日光の当たり具合などによって周期を変えるなど、こまめな計画を立てる。

すべてのマンションで一概にいえることではありませんが、検討してみる価値はあるでしょう。しかしながら専門知識のない理事や専門委員であれば、こんな方法を思いつかず、周りから言われる通りに大規模修繕工事で、すべてまとめて行ってしまうのも仕方がないことかもしれません。

マンションでの修繕工事は、新築工事とは大きく異なる工事です。また、オフィスビル・商業ビル・公共建物などとも異なります。24時間居住者が普段の生活をしている中での工事になります。そのためマンションでは大規模修繕工事で、すべてを同時期に実施する意味もあるでしょう。

しかし、先に述べたような部分的な修繕工事の検討を行うことによって、より効果的で経済的な工事が可能になります。このような考え方もあるとういうことも知っておくべきです。

大規模修繕工事は、マンションにとっては多額な費用がかかるビックイベントです。そしてマンションが存在する限り、何回も行わなければいけません。この大規模修繕工事が、マンションに住む人にとってどんな意味を持ち、なぜ工事を行うのか、今一度考えて、専門家の力も借り、管理組合主導のもとでマンションを安全で安心なマイホームにしていかれてはどうでしょうか。

この記事の執筆者

松山 功

大学卒業後アルバイトで生計を立てながら30歳で独立、新築の意匠設計を本業としていたが、平成8年に所有するマンションの修繕委員を経験。その後、マンションの大規模修繕工事のコンサルタントとして活動。

松山 功

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