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2019.4.26

結局は誰が守る!?マンション管理組合の財産

会計・資金

結局は誰が守る!?マンション管理組合の財産

唐突だが敢えて問いたい。

「会計」について質問された時、あなたならどう答えるだろうか。当然、十人十色であるはずだが、中には「お金の出し入れとそれらの帳簿管理のことでしょ」と、要点を理解しつつ回答する人もいるだろう。その反対に「簿記とかは聞いたことあるけど、詳しくはわからない」と白旗掲げる人もいるはずだ。

ビジネスの場面においては前者が多数派だろうが、こと管理組合運営という場面では、多くの人は管理組合会計を敬遠しているように感じる。

管理組合会計のウィークポイント

では一体なぜ、管理組合会計が敬遠されてしまうのか。それにはいくつかの理由があるのだと思う。

ひとつには、管理組合という団体の会計そのものがあまり身近なものではないからだろう。

ここでいう“身近なもの”とは、実務を知っているという意味ではなく、その存在自体を認知しているかどうか、ということを指している。

管理組合会計は企業会計の一般原則を参照しながらも、実際は営利を目的とした企業会計ではない。しかも管理組合会計ならではの独特の原則として「予算準拠の原則」や「区分経理の原則」というものが付きまとうからではないかと思う。
 

予算準拠の原則

 

居住者等から拠出された“共有財産”である管理費等の使い道を、予算残高を指針にして無駄の無い、全体として効果的な収支管理を行うことを目的とする。

区分経理の原則

 

管理費は経常的な費用に充てるために、修繕積立金は周期的かつ計画的な大規模修繕工事に充てるための準備金として徴収されるものであり、その目的に沿って予算執行がなされ、適正な予算管理ができることを目的とする。

と、上記のように示しても「そんな簡単に理解できるものではない」というのが本音であろう。

さらに、敬遠に拍車をかけるのが「責任」と「しがらみ」だ。

まず「責任」においてだが、管理組合の監事に着任した場合、年間の事業活動を最終的に監査する。その中にはもちろん会計監査も含まれる。それが万一、会計報告に虚偽記載などがあった場合、その指摘責任は監事にあり、最終責任は管理組合役員に及ぶため、相応のプレッシャーがかかることを実感してきた方も多いと思う。

また「しがらみ」においてだが、上記のような事態が発生してしまうと、時に家族への風当たりも覚悟しなければならないこともあるだろう。

という具合に、いくつか管理組合会計を取り巻くイメージを列挙してみたが、感じ方は十人十色、実際は枚挙に暇がないくらいであろう。

残念ではあるが、このような状況下では、住民としては管理会社からの説明を100%信じて無関心に陥り、管理組合としてはほぼノーチェックであったり、そのマンションで長らく会計監査をしてきた誰かに頼ってしまっている。これは往々にしてあることだ。

自分たちの資産は、自分たちでしか守れない

管理会社やマンション管理の有識者の多くは、誠実かつ真摯に管理組合と向き合い、適切なアドバイスをし、快適な住生活の実現をサポートしている。その一方で、管理組合役員や管理会社従業員の着服等があるのも現実だ。

事実、ここ1年以内でも数件発生している。同じ業界にいる身としては甚だ残念でならない。

管理費等の値上げが唐突に訪れることも最近ではよく耳にする動きだ。

昨今、管理組合運営を取り巻くさまざまなコストが高騰しており、管理組合収支の永続的な健全性を保つことの重要性が増している。そのためには値上げも致し方なし、と捉えることもできるが、家計へのインパクトは無視できない。値上げ一足飛びの前に、何か無駄遣いはなかっただろうか……。

心配事はこれに尽きないと思うが、いずれにしても未然に防ぐ方法はなかったのかとも考えてほしい。それが、会計監査であり、また管理組合会計を知ることではないだろうか。

お助けツール、制度の活用はいかが?

ちょっとここで話しをもとに戻そう。管理組合会計の「わからない」「馴染みがない」「責任/プレッシャー」の三重苦の話しである。

しかしそこに一筋の光あり。いくつかこの三重苦を和らげる方法がある。

1)管理会社や市販の監査ツールの活用

 

管理会社により精度はまちまちであるが、管理組合会計監査のための手引書を用意している管理会社がある。知る限りの会社では数十ページにもわたり詳細な記載をしており、日ごろのチェックの指南書として十分に活用できるものだ。管理会社に問い合わせてみると出てくるかもしれない。

2)外部専門家の活用

 

近年のマンション高経年化、高層化、大規模化等により、管理の複雑さや高度化が進むのは管理組合会計に限らない。マンション標準管理規約においても、外部専門家の活用から実際の組合運営への参画までを想定する必要があると改正を行い、管理組合ごとの状況に応じた活用を促進している。管理組合会計においては、外部監査法人の設置(設置? 委託?)が考えられる。もちろん、監査法人への委託コストは発生するので、自身のマンション規模と収支状況をみて合理的な判断が必要にはなる。

他にも見聞きする限りでは、近隣のマンションの役員との交流の中で監査のポイントを教えてもらった等、マンションを超えた地域のコミュニティ事例もある。

時間はかかるがやってみよう、そして繋げよう

それでも「自分の代でそこまでやらなくても」と思うのが人間の性かもしれない。どうしても責任や難しさのイメージが拭いきれないからであろう。でも、現実は「自分たちの財産は自分たちでしか守れない」のである。

今やり過ごしても、いつか、どこかで湧いてくることだってある。身近なツールを探りながら、今から少しずつでもできることを探してみてはいかがだろうか。そして、なによりも重要なことは、管理組合自身の強い意思と、それを永続的に繋いでいくことを使命と感じることではないだろうか。

この記事の執筆者

南場 崇

2007年大和ライフネクスト入社。経理財務部を経験し、現在のマンション会計部へ着任。組合資金の管理業務と督促業務の担当を経て、現在は新築マンションおよび他管理会社からのリプレイスマンションの会計業務立上げに従事。

南場 崇

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