2019.10.4

マンションで克服すべき4つの“リスク”とは!?

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マンションが大量に供給され始めてから50年余りが経過し、あっという間にマンションストックは650万戸を突破。いまや日本人の約1割がマンションで暮らしている。

マンションでは、区分所有建物という特殊な所有形態ゆえにさまざまな問題が発生してきた。管理運営やマナーの問題、無関心、未収金や修繕積立金の不足、近隣同士のトラブルなど、挙げればきりがない。しかし、行政、業界、そして区分所有者であるみなさん方が積み重ねてきた建設的な議論の結果、この手の問題は解決には至らなくとも、少なくとも「こうあるべき」という”姿”は見えてきたようには思う。

しかし近年、今までとは異なる性質の社会問題がマンションに大きな影響を与え始めてきている。それは「高齢化」だ。マンションに住まう世帯主の過半数が60歳以上となった。もちろん歳を取るのは人間だけではなく建物もそう。あと数年で日本全体のマンションストックの平均築年数が30年を超えていくのは、遠い未来の話ではないのだ。

“住まう人”が歳を取る・“建物”が古くなる。この「2つの老い」のリスクに加えて、「収支バランス悪化」・「社会環境変化」・「自然災害」というリスクが追い打ちをかける構図になる。さぁ、どうする。

“リスク”に対する耐性は、コミュニティの“ちから”だという結論

リスクに対する耐性があるかないかで、マンションの「住み続けられる価値」が決まってしまうといってもおかしくはない。耐性とは、リスクを想定し回避するための合理的な判断ができ、また行動に移すことができるかどうかににかかっているからだ。

そこで問題になるのは、“誰”という主語。“誰”がリスクを想定し、合理的な判断を行い、行動に移すのかということだ。マンションは区分所有建物という特殊な所有形態。一人では何もできないのは確かだ。主語は、明らかに「マンションコミュニティ」ということになる。さまざまなリスクを想定し、正面から受け止め、解決していくのは、マンションの全員でということになるのだ。

先に結論から述べよう。リスクに対する耐性とは、マンションコミュニティに合意形成をしていく“ちから”があるかどうかということ。

「コミュニティとは何か?」「合意形成のプロセスとは?」といった重いテーマも関係してしまうが、今回はどんなリスクがあるのかに絞って話を進める。

合理的な判断と行動に移すことができなくなる“リスク”

マンション住民の高齢化の問題は深刻だ。35歳前後でマンションを購入した人が40年住み続けたら、75歳になる。中古で購入した若年層も住んではいるだろうが、同じような年代の人が新築を購入し、かつ永住志向が強い現代では、おのずとこの世代がマジョリティーになる。こぞって後期高齢者になるということだ。

もちろん、マンションコミュニティの中で長年管理組合活動と向き合ってきた、少数かもしれないが、そんな方々の知識や経験は尊い。しかし、体力と理解力は衰え、管理組合運営に耐えうる人は減ってしまう。

2025年には、認知症を患う方が日本人の10人に1人になると言われているが、高齢者の比率がはるかに高い築40年のマンションでは、もっと多くなりそうだ。結果、コミュニティの中での意思疎通も、時間とパワーがかかるようになり、話が前に進まなくなってしまう。それが、人の老いがもたらすマンションコミュニティ最大のリスクとなる。

ゴミ出しのルールを守らない高齢者がいたら、それは守らないのではなくルールを忘れたのかもしれない。ひとり暮らしの高齢者の部屋からボヤが出たら、それは調理のための加熱器具の止め方を忘れてしまったのかもしれない。それでも、マンションの中の1人・2人の特定の高齢者ならば、コミュニティ全体で見守り、支援することで救うことも可能だろう。しかし、世代の多様性がなく、みんな同じような高齢者だったら、どうなってしまうのだろうか。合理的な判断と行動に移すことができなくなるコミュニティになってしまうリスクは高いのだ。

管理組合の資金が続かなくなる“リスク”

建物も古くなり、あちらこちらで改修が必要にもなる。当然お金もかかる。年金生活の方がほとんどの中では、修繕積立金の値上げもままならない。

消費税が上がる。また、最低賃金が上がり続け、管理会社からの委託費の値上要請も決して珍しいものではなくなってきた。管理費会計はどんどん圧迫されていく。

東日本大震災以降、工事コストは一気に上昇した。もともと不足気味の修繕積立金会計では、給排水管の更新工事・エレベーターのリニューアル、2回目3回目の大規模修繕工事という、築30年~45年目あたりにやってくる大工事の山場をいよいよ乗り切ることができなくなる。これが「収支バランス悪化」のリスクだ。

社会環境変化についていけない“リスク”

あまりにも古いままの管理規約、民泊対応になっていないもの、区分所有法の強行規定を規約で異なる定めにしてしまっているケース。消防法や建築基準法で新たに定められた点検を実施していないケース。管理組合で外部から上げた収益を税務申告していないケースなど、探せばたくさんの問題が出てくるマンションもある。

早い話が、社会環境の変化についていっていないケースだろう。管理会社からの値上げの要請を受け、一足飛びに現管理会社を解約することを総会で決め、めぼしいところに見積依頼をしたものの、コンペに参加する企業が1社もなかったというケースもある。最低賃金のアップと人材不足という、社会環境変化が組合運営に影響したケースだ。収支が余りにも悪く、理事会や住民対応で必要以上の工数がかかってしまう場合には、管理会社からの解約も最近は増えてきた。値上げ要請のレベルなら、社会環境変化を理解していれば、もう少しうまい立ち回りもあったかもしれないのだが。

自然災害の“リスク” ― 被災したら10年20年、いっぺんに老いるのと同じこと

2016年の熊本地震でのマンションの被害は、大規模半壊が22棟、全壊は17棟でそのうち9棟は新耐震基準の建物だった。最近の大阪北部地震でも1億円前後の改修費用を要したマンションもあると聞く。予定外の改修費用が発生するだけでなく、全壊に至ったら一瞬にして取り壊しをせざるを得ないほど、建物が歳を取ったのと同じことになる。

コミュニティごとにさまざまな事情や問題を抱えつつも、マンションや生活の復興を進めていかねばならないことになる。

「2つの老い」を筆頭に、「収支バランス悪化」「社会環境変化」「自然災害」を加えた4つのリスク。あらかじめこれらのリスクを想定し、合理的な判断を行い、行動に移すことのできるコミュニティの“ちから”がなくては、乗り越えることはできない。日本のマンションの平均築年数は築30年を超え、マンションに住まう世帯主の半数が60歳以上になってしまった今となっては、過去50年議論され続けられたマンションの一般的な課題とは異なる、新たな危機に直面しているということなのだろう。

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