2020.6.01

ウチは大丈夫? 修繕積立金のからくり

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新築や中古マンションを購入された方、これから購入を検討されている方には耳馴染みだろう「長期修繕計画」という言葉。建物を適切に維持し、資産価値を低下させないための重要な計画だ。

ここではもう少し深堀りして「長期修繕計画」の修繕とは「どのような修繕なのか」、それと密接に関わっている「資金計画」について考えてみたい。

なぜ 30 年計画が基本なのか?

30年で計画されている理由──ひと言でいえば「いつ」「どんな」工事が発生するのかを考えれば理解しやすくなる。例えば、外壁や屋上防水など、足場を設置して建物の外側全体をぐるりと修繕する大規模修繕工事。機械式駐車場の更新工事などの大きな修繕工事が、この期間内に含まれている。大規模 修繕工事は12 年周期なので、30年の間に2回、機械式駐車場の更新工事なら 30 年目あたりでの更新が推奨されている。いずれも数千万円単位の大きな費用が発生する工事が含まれてる。「いつ」、「どれくらいの費用が発生するのか」をあらかじめ把握し、ある程度計画的に資金を貯めておくために30年という期間には意味があるのだ。

「うちのマンションは25年計画だけど?」という方もいらっしゃるだろう。国土交通省が提唱する長期修繕計画作成ガイドライン(以下、ガイドライン)では、新築マンションを販売する際には30年計画、中古マンションで作成を行う際は25年でも良いとされている。すべての長期修繕計画が30年で統一されているわけではないということだ。

「修繕周期」と「長期修繕計画の計画期間」の関係を考えるときに知っておいた方が良いことがある。それは、すべての工事が30年間に収まるように「修繕周期」が設定されていないということ。例えば、玄関ドアなどの建具の更新はガイドラインでも36年周期となっている。また、作成段階で雑排水管の更新工事を 先延ばしにして設定してしまっているケースも多く、すべての修繕周期が 30 年以内には収まっていない。知らないでいれば修繕費用が足りないということや長期修繕計画を更新したタイミングで費用が急に足りなくなるなんてこともあり得るのだ。

長期修繕計画を40年、50年と、より長い期間で作成すれば問題ないという疑問も湧くはずだ。これから先に新しい工法や材料が出てくることも考えられる。長期修繕計画の利用方法にもよるかもしれないが、どこまで信憑性のある長期修繕計画なのかという話にもなりかねない。

もう一ついえることは、長期修繕計画には高齢化対策のためのバリアフリー工事といった「改良工事」が含まれていないということ。現在の建物の維持を目的に作成するのが基本だからだ。よって、最初に作成した長期修繕計画をその後もずっと運用し続けるのではなく、概ね5年毎に物価変動や施工技術の進歩な どを取り入れ、また必要な「改良工事」を追加するなどして、さらに30年間の長期修繕計画へと更新させる。いわゆる長期修繕計画の見直しを行うことが大切なのだ。

落とし穴になりがちな設備の更新費用や環境の変化

長期修繕計画には定期的な見直しが必要だが、見直しのタイミングは管理組合や管理会社の考え方によっても異なっている。すでに触れたが、長期修繕計画を更新すれば、これまで含まれていなかった修繕項目が増加していく。加えて、ほとんどの設備は30年以上経過してから更新となるため、建物が古くなればなるほど、どんどん厳しい資金計画になってしまうのだ。

マンションには「変化のサイクル」がある。住まう人の変化だ。入居時には小さかった子どもが小学生になると自転車に乗り、やがて高校生や大学生になればバイクに乗るかもしれない。そうなると、新築入居時には足りていた駐輪場置場やバイク置場が足りなくなってしまい、改良工事として新たに駐輪スペースを増設するかどうかの検討を始める管理組合もある。しかし、大学生が社会人になると今度はマンションを出てしまい、空きスペースの有効活用について検討を始める。もちろん、このような改良工事は長期修繕計画に含まれてはいない話だ。

では、住まう人の変化にマンション周辺の交通事情の変化もあわせるとどうなるだろう。例えば、ある人が定年退職をきっかけに維持コストがかかるマイカーを手放した。さらに、公共交通が充実してきてマイカーを利用することが少なくなったとする。住まう人の変化と交通事情の変化により、マンションの駐車場に空きが発生してしまうことになる。駐車場賃料収入が減り、機械式駐車場の運用コストが上回るという事態も想定できる。そうなる前に、機械式駐車場の撤去(改良工事)についても検討を始めておきたい。
つまり、長期修繕計画は、修繕項目の選択(いつまでこの設備を使用するのか)と集中(いつ修繕もしくは改良工事するのか)が欠かせないのだ。

なかなか増えない積立金をどうするのか

長期修繕計画ができても資金計画がしっかりしたものでなければ、絵に描いた餅となってしまう。マンションの収入は、所有者から徴収している管理費と修繕積立金から成り立っているので、収入を増やすには、所有者の負担を増やしていくしかないのが「一般的」。しかも、所有者によって経済事情や人生設計も異なることから、管理費や修繕積立金の増額を行うのは相当なハードルとなる。

おまけに、たまたま輪番で役員になったメンバーで進めていくことも多く、「自分が役員のときに増額したくない」、「検討した実績だけ残して次期に引き継ぎたい」などのような心理もはたらいてくる。そのような心理状況が理事会を支配すると緊縮財政に舵を切りがちだ。つまり、長期修繕計画に含まれている工事を「全体的な更新」から「部分補修に変更」し、支出をどんどん減らしていく。そうしてでき上った長期修繕計画と資金計画を手柄に、「所有者の負担を増やすことなく、健全化できました」とアピールし、区分所有者を安心させようとする。しかし、その結果、将来には資金的にマンションの適切な維持ができなくなり、資産価値にも大きな影響を与える可能性もあるのだ。

所有者の負担を増やさずに収入を増やすためには、外部からも収入を得られないか模索したいところ。例えば、マンションの屋上に携帯電話基地局の設置をすれば、(マンションの立地によっても異なるが)年間数百万円程度の収入を得ることができる。また、幹線道路沿いに面しているなら、企業の看板設置を認めて広告収入を得る。空き駐車場があるなら、思い切って居住者や近隣住民のコインパーキングとして有償で利用させれば収入を得ることができる。空室が増えているなら、いっそ所有者に民泊を認めて売り上げの一部を管理組合に納めてもらうのも一つの方法だ。

もちろん、リスクはつきものなので、アンテナや看板が天災によって周囲に被害を与えた場合の賠償をどうするのか、コインパーキングの利用者が敷地内で事故を起こした場合の賠償をどうするのか、またこの手の収入は税金を支払う必要がある。最初にきちんと対応を決めておかなければならないのだが、今ある建物や土地を有効活用するために地域に開放しつつ、地域にとけこむ工夫をしていくことができれば、よりよい住環境にもつながるのではないかと思う。

長期修繕計画と資金計画をオンリーワンのものにするには

マンションの外観や設備が異なるように、長期修繕計画と資金計画もマンションにあったオンリーワンのものでなければならない。そのためには、修繕範囲や修繕項目の精査だけでなく、10年後、20年後、30年後のマンションの未来を想像しながら作成していくことをお勧めする。そうやって完成させた計画を定期的に見直し、住む人が想像している未来と一致しているかどうかを確認していこう。集合住宅は、ひとりの意志で方向性を決めることはできないのだから、住人向けにアンケートや説明会を開催するなどして、少しずつ意見調整をおこない、合意形成を図っていくことが大事なのだ。

長期修繕計画と資金計画の切っても切れない関係について、なんとなくイメージできただろうか。「こんなことできっこない」と思われた方もいるかもしれない。しかしこの「からくり」を知ったからには、まずは今住んでいるマンションの長期修繕計画と資金計画がどうなっているのかを知ることから始めてみてほしい。

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