2020.7.1

1日でわかる、マンション共用部分見学会

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はじめての理事。わからなくて当然だ。

少し想像しながら聞いていただきたい。
早速だが、あなたは輪番により管理組合の理事を務めることになった。しかし、理事とは何をすればよいのか、そもそも理事とはなんぞやというところからわからない。そこで、前期に理事を務めたお隣さんに尋ねてみると、こんな回答だったとする。
「管理会社がサポートしてくれるから、特になにもしなくていいんですよ」
「理事会には参加できるときに参加すれば大丈夫。私なんて半分も出席してなかったなぁ(笑)」
それならばと気軽に理事を引き受け理事会に臨んだあなただが、どうもそういうことではなさそうな雰囲気だ。

ある時は、「給水ポンプに不具合がありますねぇ。これは修繕工事が必要でしょう」と言いながら、分厚い報告書と見積書を持って説明にやってくる管理会社の担当。
(おい、ちょっと待ってくれよ。不具合があるなんて言われても、何がどう悪いのかさっぱり分からない。そもそも給水ポンプって何?下手な質問をしてみなさんにご迷惑をかけたくない)なんて、あなたは思うだろう。今更、聞けない大人の事情というやつだ。わかっている人たちだけで話あってくれればいいのに。こうなったらこれからずーっと欠席してしまいたい。
とはいえ、引き受けたからには責任があるしと、心は沈むばかり。

理事になってはじめて知ったのは、マンションには数多くの設備が備えられているということと、維持していくには多額の費用がかかるということだ。しっかり話についていけるようにしたいところだが、果たして、何から勉強したら良いのだろう。

「知らない」では責任を全うできない

理事になったからには、管理会社の提案にただうなずいていればいいということではない。管理組合の総会で選出された以上は、一義的には理事が、ひいては理事長がその責任を取ることになる。“責任を負う”という心構えは必要だ。だからこそなにも知らないのに管理会社の提案にただうなずくということはしてはいけない。通常総会で総会出席者から工事の必要性などについて質問されたとしよう。理事は「管理会社から提案されたことですから承認しました」と答えたとしよう。すかさず「なんて無責任な!」「 答えになっていない!」という怒号が飛び出だしてきそうである。そのような回答では、質問者が納得しないだろう。

マンションには快適な生活を送るためのさまざまな設備が設置されている。管理組合は管理会社に設備点検を委託し、管理会社は点検の結果を理事会に報告する。不具合があれば、改善提案とともに見積書も提出される。それが、一般的な流れだ。

理事会は受けた報告と提案された内容をもとに実施の可否を判断しなければならない。
管理会社が理事会の承諾なく修繕工事を実施することはない。あくまで管理の主体は区分所有者であり、総会で選任された理事なのだ。

知らないこと、分からないことは管理会社の担当者に尋ねればよい。丁寧に答えてくれるはずだ。ただ、理事会の席上での口頭説明だけでは、理解するのは難しいかもしれない。また、ひとつひとつ尋ねていけば、時間もかかる。1時間で終わる理事会が、2時間・3時間と長時間に及んでしまう。

簡単な解決策はやはり自らが勉強することかもしれない。マンション管理士や管理業務主任者の試験用テキストを購入し、資格取得を目指すのも一つの方法だが、本業でもない資格の勉強に時間を費やすことが、果たしてどれだけの人ができるだろうか。

初歩の初歩は、実物を見るに限る

そこで、お勧めするのは共用部分の見学会だ。何事も「百聞は一見にしかず」、理事で共用部分の設備を実際に見て回るのだ。設備についての解説は管理会社の担当者にお願いすればよい。理事会の延長でやってしまえば費用もかからず、時間もかからないはずだ。マンションの規模にもよるが中規模で1時間、大規模で2時間もみておけば十分だろう。

実際、先に述べたマンション管理士や管理業務主任者の資格試験においても、設備関係の問題で点数を獲得しようと思えば、実物を見ていた方が理解も早いし覚えやすくなる。共用部分の見学会は、理事就任後のなるべく早い時期の理事会で行ってほしい。これからの1年間の理事会の中で、報告される設備点検や維持管理のための工事などについての予備知識を早く手に入れるためだ。

「自分のマンションには、『どこ』に『なんの設備』が『なんのため』に設置されているのかを知る」まずはここからだ。先ほどのシーンに戻ってみよう。共用部見学会を終えた今のあなたに、管理会社の担当からこう言われたら、今度はどんな回答になるだろう。
「給水ポンプに不具合があるから修繕工事が必要です」
「ああ!受水槽の下に設置されているあの設備ですね。それは早急に対応しないと、各住戸に給水されなくなる大事になりますよね」

さらにあなたは、こんな事態にも対応できるようになる。
「機械式駐車場下の排水ポンプが故障しました!すぐに交換が必要です」
「排水ポンプはたしか2台の交互運転だから、1台故障しても別の1台でしばらくは対応できるはずですよね?ゲリラ豪雨で浸水が懸念される季節でもないし、複数社から見積りをとって、時間をかけて検討してみたいと思います」

もちろん、その考えが正しいのかどうかは、管理会社からアドバイスをもらえばよいし、周りの理事の意見にも耳を傾けなければならない。だが、ただうなずくだけだった、あるいは訳もわからず右往左往する状態からは抜け出せるはずだろう。

裏テーマはコミュニティ形成

共用部分の見学会はマンションについて学ぶというテーマのほかに、裏テーマがある。それは、コミュニティ形成だ。理事会のメンバーで共用部分を見て回ると、自然と会話も生まれるだろう。

実際のところ、新しい理事による初回の理事会では、簡単な自己紹介をするのみ。あとは毎月の理事会で集会室でしか顔を合わせるか合わせないか……と、そんな経験をした人もいるはずだ。会話を重ねれば、お互いの距離がより近くなるのは言うまでもない。そして理事会での討論も活発になるだろう。

共用部分の見学会をマンション住民に呼びかけてイベントとして行う。それがマンション全体のコミュニティ形成にも役立つ。その時は管理会社の社員が案内し説明するのではなく、理事自らで案内し説明をしてほしい。やはり、管理会社の社員が説明をするのと、同じ建物で暮らしている理事が説明するのとでは、住民の納得度、信頼感が大きく異なるからだ。

子ども連れで参加するよう呼びかけても良いだろう。普段は立ち入れない屋上で高いところから景色を眺め、警報設備などがある管理員室や地下室では受水槽や給水ポンプなどの機械設備を見ることもできる。もちろん、安全を確保した上でなのだが、子どもたちにとっては、ワクワクする体験であるはずだ。

当たり前の話だが、マンションは古くなっていくものだ。劣化は建築中から始まっている。年数が経てば経つほど修繕工事は増え、管理費会計や積立金会計からの支出は増える。それをただ実物も見ずに管理会社からの報告だけで行っていいのか。マンションは住民と一緒に齢をとっていく建物。その視点で、建物や設備をみてやってはどうだろうか。

大切な管理組合の資金でもある。自分の目で傷み具合をみて、納得して、使い道を考えていってほしい。

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