2020.2.18

令和元年度第1回 京都市マンション管理セミナー 「失敗しない管理組合マネジメント〜これからの時代の管理会社とのステキなおつきあい〜」を開催

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11月24日(日)、キャンパスプラザ京都(京都市下京区)にて「令和元年度第1回京都市マンション管理セミナー 〜これからの時代の管理会社とのステキなおつきあい〜」が開催されました。

本セミナーは、京都市とNPO法人マンションサポートネットが共催し、分譲マンションの適切な維持管理を推進するために実施している勉強会です。参加者は、現在ご自身のマンションで管理組合の理事長または役員を務めていらっしゃる方を中心に、地元で管理会社を経営している方または社員の方、その他今後の参考のために勉強にいらっしゃった方など。今回は募集開始早々から応募が殺到し、想定を上回る総勢80名の方にご来場いただきました。

講演の第1部では、本企画の主催者であるNPO法人マンションサポートネットの理事長を務める佐藤武氏が登壇。「知っておくべき! マンション管理適正化法の基本!」をテーマに講演しました。

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第一声として佐藤氏が語ったのは、「マンション管理適正化法 第3条」に規定されている「マンション管理適正化指針」の理念だ。マンション管理適正化指針は国の分譲マンションに関する基本方針が掲げられている。「マンションの管理の主体は、マンションの区分所有者で構成される管理組合」である、とは有名なくだりだ。更に同指針では、マンションの区分所有者は、戸建とは異なり相隣関係に配慮を要する住まい方であることを十分に認識し、マンションの快適かつ適正な利用と資産価値の維持を図るため、管理組合の一員として進んで管理組合の管理運営に参加し、定められた管理規約や総会での決議事項を遵守する義務があると記載されていることを紹介した。

しかし現実は理念とは異なる。佐藤氏が専門家として管理組合役員から相談を受けるトラブルは、この同指針の居住者義務が遂行されていればけっして起きないだろう「管理組合の運営トラブル」「建物設備の不具合トラブル」「居住者間のマナートラブル」などが多く、同指針がマンション居住者に広く一般に伝わって欲しいとの認識を示した。

次に佐藤氏は、マンション管理適正化法に関連する法律として「区分所有法」に触れた。同法第3条には「区分所有者は全員で」「管理を行うための団体」つまり、管理組合を構成すると規定されていることにも触れた。区分所有者一人ひとりが組合員であるという意識が希薄なのではないかと指摘した。

また、マンション管理適正化法は、平成12年に施行され、マンション管理士資格とマンション管理業者の登録制度が定められたが、つい最近まで管理組合と管理会社の関係に関する法律がなかったという点も覚えておいて欲しいと述べた。

特にマンション管理適正化法は、これまでは「私有財産」として行政が立ち入れなかった分譲マンションの分野において消費者保護の観点から、不適格者の参入阻止や委託契約書自体を作成しないなどの悪習にもメスを入れることができるようになったことは、大きな収穫となった。また、マンション管理士資格制度が創設された結果、マンション管理の専門家として区分所有者と管理組合、管理組合と管理会社との様々なトラブルがより円滑に解決に向かう事例も多くなってきたと紹介した。

このように、法の施行や資格創設の背景・目的を紹介し、「私が思う理想の形は『管理組合と管理会社は対等なビジネスパートナー』であらねばならないということ。『管理会社がやって当たり前』という発想は違う。管理会社とのよりよい関係性を築けるかがこれからの鍵になる」と締めくくった。

第2部で登壇したのは、丸山肇氏(マンション管理士/大和ライフネクスト株式会社)。「少子高齢化が原因?? 管理会社との劇的な関係変化が訪れる!〜社会環境の変化がもたらす管理会社との新たな関係。“協働”する時代がやってくる!!〜」というタイトルで講演を行いました。

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ここで注視して欲しいのが、タイトルにもある「劇的な関係変化」という点。丸山氏は今まさにマンション管理の現場で起きている“劇的”な関係変化について、赤裸々に現状を解説した。

講演の第1部で佐藤氏が、「管理会社がやって当たり前という発想は違う。管理組合と管理会社は対等なビジネスパートナーでいなくてはならない」と締めくくったが、これまでの管理組合と管理会社の関係性に鑑みると「管理組合>管理会社」というパワーバランスにより「やって当たり前」という買い手市場の時代が続いていた。

しかしここ数年──いや今年に入ってからというもの、状況は一変。一気に売り手市場へと転じているとした上で丸山氏は、「管理組合との折り合いが付かず、撤退する管理会社が後を絶たない」と現状を述べた。

その背景として、本サイトで何度も紹介している“2つの老い”の影響はもちろん、それに加え管理会社自体に“3つの劣化”が生じ始めていると指摘した。“3つの劣化”とは、

①管理員などの管理現場やフロントマンの人材不足

②最低賃金上昇による人件費の高騰

③管理マンションの2つの老いによる生産性の低下・リスクの増大

つまり、2つの老いにより管理組合とマンションに対する手間が増え、管理会社の人材不足と賃金上昇という条件が重なり、管理業界では現在、営業利益が減少し損益分岐点が上昇しているという状況に陥っている。管理の続行が不可能と判断せざるを得ない現状が急ピッチで進んでいることを示唆した。

管理員のなり手不足は、定年退職の年齢が引き上げられたことが大きな原因で、応募する絶対数が激減し、また応募してくる年齢層も従来の管理員の定年に近い方しか来なくなった。

理事会の支援業務などを行う若手のフロントマンも、管理組合との関係がBtoBではなくBtoP(パーソン=個人)となっていたことも否めない。さらにいえばPtoPという、極めて個人的なやりとりをせざるを得ない現場も多々生じていた。夢や希望を持って就職した若者たちにとっては、そういった関係性に疲弊し“クレームが多い産業”というイメージが定着。就職先としての人気が落ちてしまっているのではないか。

こうした問題は、起こるべくして起こったといえるが、管理会社から管理続行を拒否されてしまえば、管理組合にとっての現実的な問題は、管理会社のサポート無くしてどのようにして自分たちの財産価値を守っていけばいいのかということにもなりかねない。

この事態に丸山氏は「とはいえ、これまで管理会社は管理組合に寄り添ってやってきた。お金だけの関係で片付けられるものではない」とし、「論法ではなく皆さんなりの答えを出してほしい。それにはマンション内の風通しの良さや良好な人間関係が大事」と投げかけた。

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第3部はパネルディスカッションとなり、「失敗しない管理組合マネジメント」というテーマで議論された。登壇者は、座長を務める折田泰宏氏(けやき法律事務所 所長)、第1部の佐藤武氏、第2部の丸山肇氏に加え、中谷秀彦氏(伊藤忠アーバンコミュニティ株式会社)、柏勇次氏(大和ライフネクスト株式会社)の5名。

第2部で丸山氏が“劇的な関係変化”を告白した内容を引き継ぐ形で、座長の折田氏が「平たくいえば管理会社の逆襲が起こっている。(今だからいえるが)管理会社は可哀想な立場だった」と切り込んだ。「どこで儲けを出せるか、マンションの管理は利益が薄い業界でもある。しかし値上げもできないという現状があり、それに輪をかけて過度の要求やクレームを突き付けている人物、いわゆるカスタマーモンスターも少なからずいる。」と付け加ええ、立ちゆかない構図を歯に衣着せぬ批評で展開しました。

それに対し、先頭バッターとなった柏氏は「これまで30年以上に亘りこの業界に携わってきた。折田先生の言葉をお借りすればいわゆるカスタマーモンスターの事例もあるが、昔は理事長と力を合わせカスタマーモンスターに対応するケースもあった。また、大きな山を越えたようなときは、理事の奥様が手料理をふるまってくれるなどアットホームな関係性もあった。しかしその当時と今を比べると、趣は変わり、苦労を共有していくムードは少なくなったような気がする」と分析する。

また座長からの「管理会社として管理組合のどのようなあり方が望ましいか」という問いに対しては、中谷氏から、「管理会社が区分所有者個々の意見を集約するのは不可能。決議の執行機関である理事会で結論を出してもらわないといけない」と話した。これには同じく管理会社としての立場で柏氏も「同意見です。実は理事会役員ではない方からの管理組合運営に関する個人的な電話というのはよくある。会社としてはBtoPへの対応はできかねる。区分所有者は理事会に意見を提案し、理事会は管理組合の意見として理事会として協議した結果を、代表として理事長から管理会社には連絡をして頂きたい」とし、理事会が適切な運営を行う健全な管理組合のあるべき姿を示した。

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その後、話題はさらに踏み込んだ内容となりました。「事実上、管理費の引き上げはやむを得ない」というテーマで中谷氏は「理事会に弊社の社員が何回出席しているか、どれくらいの頻度で工事発注されているかなどを判断基準にさせてもらっている。そこに達していないマンションには『損益分岐点まで引き上げて欲しい』と交渉している」と毅然とした対応を口にしました。その一方で、「とはいえ、マンションと管理会社は契約での事務的なもの以外の付き合いがあるのも事実。日々実務に携わっている管理会社の社員からすれば(冒頭で座長が発した)逆襲とは思っているわけではなく、『企業として努力はするので協力してもらえませんか』というのが本音だ」との発言がありました。

また、現場の様子について佐藤氏は「顧問をしている先は10件ほど。そのほとんどが管理会社から値上げの要請をされているものの、管理会社と良好な関係を築けていれば値上げ幅が少ないなど、バラつきもある」との見方をコメント。同様に丸山氏も「管理会社として誠意は尽くしたい。解約の申入れには理由を説明する必要はないが、解約も値上げも説明がなければ管理組合としても釈然としないのも事実だろう」と苦しい胸の内を明かしました。

2〜3年前までは、管理組合が声をかければ喜んで管理会社が寄ってきた時代がありました。しかし、今は「お金ありますか?」と“足下を見られる”時代。しかしながら、パネラーの話からは、“人と人”という温度感は残っており、管理会社として管理組合に寄り添い続けたいという想いものぞかせている。いずれにしろ、まずは良好なパートナーシップを築くことが大切なようだ。

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昨年の同セミナーとは打って変わり、管理会社からの“三行半”といった厳しい話となった今年のセミナー。これを聴講した参加者はどのような感想を抱いたのか数名の方に話を伺ってみました。

数回理事長を経験し、先日退任した女性

「私としては、今日の内容は“当然のこと”であると受け止めています。今まで私たちは当たり前のように“管理会社バッシング”をしてきたのではないでしょうか。うちのマンションでもそうです。管理費の値上げも、決して管理会社だけが儲けようとしてのことではないことはよくわかります。セミナーの中でお話もありましたが、管理会社には適正な価格をお支払いして、良好な関係を築いていかないといけないと思いますよ」

理事長1年目の男性

「今回初めて理事長になりましたので、いろいろ勉強していかなければいけないと思って参加しました。(話の内容は厳しいものでしたが)逆にうちのマンションは“これでいいんだ”という確認になりましたね。うちのマンションは非常に風通しが良くて、話し合いも活発なんですよ。なので、今日の話を持ち帰って報告しますし、マンション内でしっかり決議できていけば管理会社にも負担をかけることなく、共に向かい合ってやっていけるんじゃないかなと思いました」



と、上記2名の方に関しては肯定的な意見であり、管理会社が理想とする理事会の体制がとれているように思える。しかし、次に紹介する2名の方に関しては、まったく違った感想を聞くことができた。

地元・中小企業の管理会社にお勤めの男性

「話を聞き、大手さん(管理会社)がある程度お金のないマンションをふるいにかけるという強い姿勢を示されましたので……我々のような中小企業としてはどうしようかなと考えてしまいましたね。大手が手放したマンションのおこぼれをリプレイスしにいくことができるでしょうが、結局今日話にあったような問題に直面し、いずれ立ちゆかなくなることは目に見えてますよね。なので大手さんと同じようなスタンスでいくべきなのか、現時点での判断が難しいところです」

初めて管理組合の理事になったという男性

「自分が理事長になったら、こんな難しい問題を引き受けなきゃいけないのか!と思ったら怖くなりました。理事になったのだから勉強に……なんて気軽な気持ちで来たらとんでもない。マンションを自分が経営していけるのか、という不安しかありません。正直、分譲マンションに住み続けていていいのかな、売却した方が将来ラクに暮らせるんじゃないかな、そこまで想像してしまいました」



という不安や、今後の方針に迷いを感じる意見も伺うことができた。いずれにせよ、避けては通れない事態を目の前にして、自分たちの資産であるマンションをどう活かしていくのか、一人ひとりが真剣に考えなければいけない岐路に立たされている。


(取材者・浅井ユキコ)

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