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2021.10.22

SDGs──マンションライフでできることとは?

サステナビリティ

SDGs──マンションライフでできることとは?

日常生活に広がるSDGsの取り組み

最初は何気なく目にしていただけなのに、「これも」「これも」とやたら目にするようになったものがある。

ひとつは通勤電車の中で見た有名企業の広告。その次は取引先相手の胸元のバッチ。そしてスーパーマーケットで手にとった商品の箱の裏面にあった。

実はこの3つ、共通していたのは「SDGs(エスディージーズ)」のマーク。昨今では多くの企業や自治体が各自の取り組みを発信しているため、日常生活の中でもよく見かけるようになったのだ。

すでにご存じかと思うが、SDGsとは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称。2015年の国連サミットにおいてすべての加盟国が合意した、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」のこと。2030年を達成年限とし、17の目標と169のターゲットから構成されているというもの。これは国際社会共通の目標であり「目標とターゲットがすべての国、すべての人々、及びすべての部分で満たされるよう、誰一人取り残さない」ということを原則としている。もちろん、取り組みの主体は企業や自治体だけに限らず、個人でも取り組めることはたくさんあるという。

しかしSDGsのことを知っていたとしても、実際に自分自身がSDGsに向けた取り組みを行っているのかと聞かれると、胸を張って「私は○○に取り組んでいる」といえる人は多くないことと思う。

そこでSDGsの17個のゴールをおさらいしてみる。

1  貧困をなくそう
2  飢餓をゼロに
3  すべての人に健康と福祉を
4  質の高い教育をみんなに
5  ジェンダー平等を実現しよう
6  安全な水とトイレを世界中に
7  エネルギーをみんなにそしてクリーンに
8  働きがいも 経済成長も
9  産業と技術革新の基盤をつくろう
10 人や国の不平等をなくそう
11 住み続けられるまちづくりを
12 つくる責任 つかう責任
13 気候変動に具体的な対策を
14 海の豊かさを守ろう
15 陸の豊かさも守ろう
16 平和と公正をすべての人に
17 パートナーシップで目標を達成しよう

どれか自分にできることはないか──そういう気構えでいるものの、読めば読むほど地球規模の取り組みという課題の大きさに圧倒され、「私ひとりが取り組んだところで、影響力なんてないのではないか…」という気持ちになり行き詰まる。

いや、一人ひとりが意識を持ち行動するようになれば、世界を大きく変化させられるはず。裏を返せば、全世界の人々が同じ課題意識を持たなければ解決できないほどの深刻さなのだ、と私は捉えている。

そこで、マンションライフにおける個人で取り組めるSDGsを3つ考えてみた。いずれもスモールステップだが、取り組み自体も持続可能という観点のものである。

マンションライフにおける個人で取り組めるSDGs その1:ゴミ置き場では分別を徹底する

あなたが住むマンションのゴミ置き場でも、分別表やゴミの分類ごとの表示がされているのではないだろうか。それに従って、ゴミを正しく分別するだけでもSDGsにつながる。

ゴミを分別することでリサイクルが進み、限られた資源の有効活用ができる。捨てればゴミ、分ければ資源だ。これは、SDGsの17のゴールのひとつ「12:つくる責任 つかう責任」につながる。

また、自分がきちんと分別してゴミ置き場に出すことで、他の利用者も分別の手を抜きづらくなる、という効果もある。ラベルがきれいにはがされたペットボトル回収袋の中に、自分だけがラベル付きのまま捨てるというのは、心理的に容易ではない。結果として、ゴミ置き場ひとつをとっても、複数の人が集まる場所の秩序が保たれることになる。このように、一人ひとりの分別意識が、マンション内の他の人に影響をあたえて連鎖し、やがてマンション全体での取り組みへと変化していくはずだ。

マンションライフにおける個人で取り組めるSDGs その2:宅配ボックスに届いた荷物は時間をおかず取り出す

昨今、宅配ボックスが設置されているマンションは多い。マンションみらい価値研究所の調査によると、新築からの設置率は68.3%、また管理組合により後付けされた設置率は2.5%であり、合計で70%以上の分譲マンションに宅配ボックスが設置されている。同調査レポートでは、この宅配ボックスから自宅までの間に存在する課題について取り上げている。近年注目が集まっている「物流におけるラストワンマイル」ならぬ「専有部分までのラスト0.1マイル」だ。

ラストワンマイルとは、「最後の1マイル」という距離的な意味ではなく、お客様へ商品を届ける物流の最後の区間のことを意味する言葉で、この区間に課題が集中していることでも知られている。それをマンション内に置き換えると、宅配業者が宅配ボックスに荷物を届けた先の、ラスト0.1マイルに課題があるというのだ。

宅配ボックスの便利さは、不在時でも宅配の荷物を受け取れるという点にある。利用者は帰宅後に自分の荷物を取り出す。しかし長期不在でないにも関わらず、荷物が取り出されないことがある。まさに「専有部分までのラスト0.1マイル」が管理組合の前に立ちはだかる。宅配ボックスに空きがないと再配達が発生し、他の居住者も宅配業者も困るため、管理組合では掲示などにより早めに取り出すよう居住者全体に呼びかけを行っているケースもある。

荷物を早めに取り出すことで、宅配業者の再配達を減らすことになり、結果としてガソリンの燃焼により排出される二酸化炭素量を減らすことになるといえるだろう。僅かなことかもしれないが、これこそ心がけひとつ。次の利用者への気遣いだけでなく、SDGsの17のゴールのひとつ「13:気候変動に具体的な対策を」につながる。

参考レポート
>マンションみらい価値研究所>レポート>分譲マンションにおける宅配ボックスの設置率および設置検討時の事例について

マンションライフにおける個人で取り組めるSDGs その3:マンションで行われる防災訓練に参加する

あなたが住むマンションでは定期的な防災訓練が行われているだろうか。代表的なものでいえば、消防訓練だ。マンション内での火災発生を想定した、通報連絡訓練、初期消火訓練、避難訓練などがある。また、火災だけではなく、震災時を想定した訓練を行う管理組合もあるだろう。

ある管理組合の事例では、震災時の火災を想定したマンション内の訓練を行ってみたところ、居住者の中から、「マンション内にはご高齢のお一人住まいの方がおられ、階段でのひとりでの避難ができない。また、地震により数日間エレベーターが止まってしまうことも考えられる。そういった状況を想定してマンション内の助け合いの体制も考える必要があるのではないか」という問題提起があった。

これをきっかけに、管理組合オリジナルの震災時の対応マニュアルを作成し、それをもとに訓練を行うようになった。災害時はなかなかマニュアル通りにはいかない。訓練でシミュレーションをしておくことが肝心だ。

災害時に居住者が自ら行動できるよう訓練しておく。これはSDGsの17のゴールのひとつ、「11:住み続けられるまちづくりを」につながる。誰もがずっと安全に暮らせる災害にも強いまちを作るには、そのまちを構成するマンション自体がそうあることが大切だと考える。

マンションライフにおけるSDGsとは?

マンションライフで個人で取り組めるSDGsを考えてみて気づいたことがある。それは、いずれも共同住宅ならではの生活でマナー・ルールを守り、管理組合の呼びかけに協力するという当然のことばかりだ。

マンションは、同じ建物の中で複数の人が暮らしている。だからこそ、マンション内の少しの心がけや協力の気持ちが、めぐりめぐって大きな影響力になる。まずはマンションという小さな社会で、すぐにできるアクションをしてみるのはどうだろう。日常の自分の行動に、社会的意義を加えてみるのだ。

自分に身近な社会を良くすることから始めていく、こう考えると、マンションライフそのものが、SDGsの17のゴールのひとつ「17:パートナーシップで目標を達成しよう」の第一歩になるのではないだろうか。

この記事の執筆者

大野 稚佳子

マンションみらい価値研究所研究員。管理現場にて管理組合を担当する業務を経験後、マンション管理の遵法対応を統括する部門に異動。現在は、マンションみらい価値研究所にて、これまで管理現場にて肌で感じた課題の解決へつながる研究に勤しむ。

大野 稚佳子

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