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2022.2.25

適正化法改正から考える 管理組合の“主体性”とは!?

マンションの法制度

理事会・総会

適正化法改正から考える 管理組合の“主体性”とは!?

平成13年8月1日に「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」(以下、「適正化法」という)が施行された。それから20年が経ち、今回、適正化法は大きく改正された。今回の改正が、区分所有者や管理組合に直接関わるものであり、管理組合が主体性を持って一歩踏み出すための動機付けになるのではと私は感じている。

思慮の浅い「自由」の積み重ねが、結果的に「責任放棄」へ

多少、乱暴な言い方かもしれないが、マンション管理業者を規制することで管理サービスを受ける管理組合を保護する法律、それが今までの適正化法だったと思う。

なぜなら、管理組合に向けて主体性を求める条文は、「マンション管理適正化指針で定めるところに留意し、適正に管理するよう努めなければならない」(旧適正化法の第4条)と、後にも先にもこれだけで、かつ「努めよう」という呼びかけ程度にしか響いていない。

しかし、これは致し方ないことなのだろう。

所有権を尊重し第三者に迷惑をかけないのであれば、あれやこれやと法律で規制しない。それが自由主義国家の基本でもある。“自由”だからこそ発展できる。それが、リベラリズムでもあり、日本の社会の素晴らしいところでもあるからだ。だから、「努めよう」と、ずいぶんと遠慮した言い方が精一杯だったということだ。

※適正化法_旧法の第4条
(管理組合等の努力)

第四条  管理組合は、マンション管理適正化指針の定めるところに留意して、マンションを適正に管理するよう努めなければならない。
  2  マンションの区分所有者等は、マンションの管理に関し、管理組合の一員としての役割を適切に果たすよう努めなければならない。

なお、改正適正化法では第5条に文言が追加され記載されている。

しかしマンションは、すでに社会にとっても無視できない居住形態であり重要なインフラになっている。所有者の“自由”と“責任”は、常に一対であるべきなのだが、実態はどうだろう。資金不足で、安全確保のための最低限の工事ができない。住民が高齢化して理事のなり手がなく放置に至る。そんな顛末を考えることもせず問題が表面化する直前まで、住み続けてきたケースも多いのではないのだろうか。

いつの間にか、にっちもさっちもいかない状態になり、「結果的に責任放棄」に至ってしまう。もしそんな事態に陥ってしまうとしたら、その一番の原因は、所有者たちによる思慮の浅い“自由”の積み重ねなのかもしれない。

適正化法の改正が、主体的に取り組む動機付けに

さて、今回の改正が、主体性を持って一歩踏み出す動機を与えたと思ったのは、改正に盛り込まれた「管理計画認定制度」の存在だ。
この制度は所有者の“責任”を強制するものではないのだが、区分所有者や管理組合が忘れてはいけない“責任”とは、「これ」ですと、その“認定基準”で明示している。また、認定されるかどうかが、中古流通市場で、大きな評価の違いを生むであろうことを想像させるには十分だからだ。

今のマンションを“終の棲家”と考える居住者は多い。永住志向が強いわけだから、より高く転売して新しいところに住もうと考える人は少ないのも事実だろう。しかし、自分のマンションが認定されないなら、若い人が敬遠してしまうような居住価値の低いマンションということになる。これからも住み続けるとしても、その先、マンションの空洞化が進んでしまうことに危機感を感じるなら、これからどうしたらよいのかと考えていく動機付けにはなりえるということだ。

何を努力すべきかは、認定されるための“認定基準”ということになるだろうし、それに向けて管理組合が行動に移していくなら、それが“主体性”ということになると信じたい。

※管理計画認定制度の関連コラム
>マンションみらい価値研究所>コラム>マンション管理適正化法の改正が、“中古流通市場”に影響を与える!?

>マンションみらい価値研究所>コラム>マンション救済の制度になるか?―管理計画認定制度

>マンションみらい価値研究所>コラム>知っておくべき「マンション管理適正化法改正」の背景とは

管理組合の主体性ってなんだろう!?

適正化法では、管理組合の運営をサポートするマンション管理士制度が定められている。しかし、この制度をしっかり活用し主体的に管理運営を行っている管理組合はまだまだ少ない。

「主体的に運営しているので、マンション管理士の必要はない」という人もいる。裏を返せば、「主体性が欠如しているマンションには、マンション管理士が必要」となるわけだが、果たしてそうなのだろうか?そもそもマンション管理士は管理組合の主体性を醸成させるために作られた制度ではない。マンション管理の専門性を補い、理事会の説明責任をサポートすることが本来の目的だ。

管理費会計にマンション管理士の顧問契約に関わる経費を計上し、総会で決議しなければ、そもそも依頼はできない。主体性のある管理組合だからこそ総会で顧問契約を決議ができるわけだ。

また、こんな話もある。
「管理会社の上手な使い方」という講演テーマは、しばしば依頼される定番ものだ。いかに上手に管理会社からのサポートを受け、手を取り合ってより良い管理を目指すかという、主体的な管理組合に向けての内容である。

しかし、すっかり勘違いされて、「管理会社に任せて理事会を楽に済ます方法」や「管理委託費を安くする作戦」などのテクニックを期待される人も多いのも事実だ。しかし、そんな思考の背後にあるのは、目先の損得勘定でしかないように思えてならない。先にも思慮の浅い“自由”の積み重ねが「結果的に責任放棄」へ至ってしまうと述べたが、これと近しい考え方のように思えてならない。主体的に“良い管理”を目指してもらいたい私としては、あなたの描くものは、そもそも間違っていると、言いたくなってしまう。

正しい“定義”とそれを目指す“目的”――そのヒントはどこに

良い管理――その正しい“定義”とそれを目指す“目的”が明確であれば、管理組合全体で一歩先に踏み出すことができる。それが、“主体性”が生まれるということなのだ。

冒頭に、「マンション管理適正化指針で定めるところに留意し、適正に管理するよう努めなければならない」という旧法の第4条の紹介をした。「努める」という言葉尻を取って話を進めてきたが、良い管理の正しい“定義”とそれを目指す“目的”は、実は、 “マンション管理適正化指針”(以下、「適正化指針」という)の中に簡潔に書かれているのだ。

この適正化指針をしっかり読み込まれた方は少ないと思うのだが、実は、この中にも主体的に管理していくための重要なヒントが詰まっている。

※適正化法の改正後は、国、地方公共団体、マンション管理士などの役割などに範囲を広げた「マンションの管理の適正化の推進を図るための基本的な方針」の中の一つの章として「適正化指針」がまとめられています。

しかし、適正化指針を漫然と読み込んでも、当たり前のことしか書いていない、という話にもなりかねない。その背後にある想いや狙いを読み取ることが欠かせない。

たとえば、こんな読み取り方だ。
マンションの管理の適正化のために管理組合が留意すべき事項に、「管理組合の運営」という章がある。その中に以下のようなことが書かれている。

「管理組合の自立的な運営は、マンションの区分所有者等の全員が参加し、その意見を反映することにより成り立つものである。そのため、管理組合の運営は、情報の開示、運営の透明化等、開かれた民主的なものとする必要がある。~」

もちろん、素読みしてしまえば、当たり前のことで終わってしまう。
少し、分解して考えてみよう。
①管理組合の自立的な運営は、全員が参加し、その意見が反映されることで成り立つ
②意見が反映されるためには、情報の開示、運営の透明化等、開かれた民主的なものとする必要がある
③では、情報の開示や運営の透明化とは具体的にどういうことか?
④また、開かれた民主的なものとはどんな状態なのか?
⑤そのために、理事長(理事会)はどのように配慮をして、影響力を発揮すべきなのか?
①②は当たり前なことで、「そんなことはわかっている」となりそうだ。「開かれた民主的なもの」などは、中学校の公民の勉強のようだが、③④⑤をあなた自身が深掘りして考えなければ、なにも答えは出てこない。そのあたりが「行間を読み取る」ということだろう。

「区分所有者の管理組合への参加意識が低くて、主体性がなくて困っています。どうしたら良いでしょうか」と、管理組合の理事から相談を受けることがよくある、そんなとき、この話をして③④⑤を一緒に考えるファシリテーションを行うようにしている。

もちろん、腹落ちの差はあるが、すっきりとした表情で「頑張ります」と言われると、私もほっとできるものだ。「その背後にある想いや狙いを読み取る」姿勢で管理組合の“主体性”について考えてみてはどうだろうか?

この記事の執筆者

丸山 肇

マンション管理士。株式会社リクルートにて住宅情報北海道版編集長、金融機関への転籍を経て、大和ライフネクスト入社。管理企画部長・東京支社長などを歴任。現在は、マンションみらい価値研究所にて、マンション元気ラボ主筆コラムニストとして活動。

丸山 肇

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