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2022.4.28

多様性の時代、マンション管理組合はどうする!?

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多様性の時代、マンション管理組合はどうする!?

もはや“多様性”という言葉は、しっかり定着したようだ。

辞書では、「いろいろな種類や傾向のものがあること。変化に富むこと。」と説明されているが、本来は自然科学から発生した概念らしい。画一的な生物群よりも、多様性を持った生物群の方が、自然環境の変化にも耐えやすく、また進化も進むということのようだ。その言葉がいまや、私たちの社会や文化の中で当たり前に根付いている。

マンション管理でも同様だ。管理組合が円滑に機能するためにも、“多様性”を尊重し合意形成を育むことが大切になる。そこで今回は、マンションに住む人・所有する人の多様性について考えてみよう。

マンションの所有目的の多様性とは

例えば、等価交換方式で建てられたマンションでは、元地権者の方も居住し、また複数住戸を賃貸住戸として資産運用をしているケースがある。やはり、一般分譲で購入された方と元地権者の方とでは、マンション管理についての考えや想いも違ってくるのは当然だろう。

大規模開発では、店舗や事務所、1階にスーパーなどの大型店舗があり、元地権者の方々がフロアを共有床として所有し収益事業を行っているケースもある。自治体も参加しているような再開発事業では、地方自治体も専有部分を所有し、行政サービスの窓口として利用するようなケースもある。このような複合用途型マンションの場合は、住宅管理組合・店舗管理組合・全体管理組合など、一つのマンションに複数の管理組合が存在し、運営面も大変複雑だ。

投資と実需などの所有目的が混在しているケースもある。タワーマンションなどがそうかもしれない。
① 最初から賃貸収益を目的とする
② いったんは自分が住むが近い将来に転売してキャピタルゲイン(転売益)を得ようとするもちろんこの手のマンションでは海外からの投資家が購入するケースもある。

観光拠点となるような地方都市の中心に建つタワーマンションでは、本来は地元実需を狙って売り出したにもかかわらず、蓋を開ければ半分近くの方が首都圏をはじめ日本全国から購入されているケースもある。値崩れの少ないリゾートマンション、もしくは別荘代わりとして、また投資の一環として購入されているようだ。

所有目的が、“住む”という実需だけでなく、投資用・事業用・リゾート用などと多様性の幅は一挙に広がる。

投資指南のコンサルタントによると、「投資目的ならマンションの大規模修繕で大きな費用が発生する前の築10年以内を目安に転売を」という論もあるようだ。目的が異なれば、損得の判断基準も異なっていく。多様性を理解し、うまく調整していかないと修繕積立金の改定や大規模修繕工事の実施も、なかなか進まないケースもあると聞く。

欧米は、第三者管理方式があたりまえ

欧米では、区分所有者で管理組合を構成していても、管理の執行にあたる管理者は、外部の法律や会計に精通した専門家に委任する“第三者管理方式”が一般的だ。国によって異なるが、国家資格や多額の預託金を積むなどの制度やルールに基づき行われている。日本でいえば弁護士並みの専門性とステータスのある人物が管理者になる。

実は、そんな管理の仕方が世界標準なのだ。日本と異なり、欧米の移民の多さは桁違い。価値観や国籍・宗教などの“多様性”の幅は極めて広い。そんなグローバル先進諸国では“第三者管理方式”にしないと管理運営が立ち行かないのかもしれない。多様性のための方式といって良いのだろう。

日本においての”多様性”は所有目的の違いという程度であるため、海外ほどの多様性は想定せず、管理組合の“主体性”を期待して“自ら管理する”というやり方を選択したということなのかもしれない。しかし、これからはこの日本流で果たしてどこまで通用するのかという疑問も浮上する。

日本では、欧米のように外部管理者等の資格や制度などは作られていないものの、“第三者管理方式”が平成28年の標準管理規約の改定時に反映された。正確にいえば、理事に専門家が就任することを前提とした「外部専門家を役員として選任する場合」という内容が追加された。改定の背景は、高経年マンションの理事のなり手不足が発端にある。海外でいう、世界標準の“第三者管理方式”とは、そもそもスタートラインが異なるということだ。

※区分所有法ではもともと第三者管理方式を否定はしていません。標準管理規約に“第三者管理方式”が盛り込まれたことを述べています。

日本型、 築古マンションの多様性とは !?

マンションの高経年化は進行している。建物だけでなく、住まわれる方も歳をとる。私個人的には、先に述べた所有目的の違いを超えるような“多様性”が生じてしまうのではないかと感じている。“高齢化型多様性”というやつだ。

平成30年度住宅市場動向調査(国交省)では、新築マンションを購入される世帯主の平均年齢は約42.7歳。ファミリー向けマンションであれば、同じような間取り・価格帯の住戸に、概ね40歳前後の世帯主の家族がこぞって入居することになる。入居されるご家族のプロフィールでいえば、小中学生の子供がいる3人もしくは4人家族だろうか。ファミリー向けという商品特性から考えれば、個人の個性の違いはあるにしろ、家族構成や年収、生活パターンの似た、いわゆる画一性が高い人々が、最初の頃はたくさん住み始めることになる。

しかし、30年・40年と時を経て、子供たちは独立し、70歳代・80歳代の老夫婦だけ、もしくは連れ合いに先立たれ、お一人で暮らす高齢者も増えてくる。中にはヘルパーの介護支援が必要な方も出てくるだろう。厚生労働省の統計予想では、2025年には日本人の10人に一人が認知症になるとのこと。長寿大国日本の幸せとは裏腹に、こういった問題がマンションの中でも当たり前に発生していく。

高齢者の経済事情は、より差が出やすくなる。年金受給といっても、国民年金だけの人もいれば、それに加えて厚生年金や企業年金などが加算される人。早いうちにマンションのローンを繰り上げ返済し、それなりの貯えをお持ちの方もいる、一方でローンの支払いが定年後にもまだ残っている方もいるだろう。

世界の貧困度を示す基準指標がある。“相対的貧困率”という推計方法だ。日本は、悲しいかな、高齢者の相対的貧困率が他の先進国の中では極めて高い国となる。女性で見た場合、60歳代後半から20%程度が貧困層、70歳代・80歳代では25%を超える。4人にひとりは相対的貧困のゾーンに入っていくわけだ。

高齢者を高齢者というひとくくりの画一性で判断してしまうのは極めて危険だ。高齢者こそ、その暮らし方や境遇、また経済的事情など、多様性はどんどん広がっていきやすい。“高齢化型多様性”とは、そういう意味だ。

築古マンションのお金の事情と多様性

管理組合のお金の問題と言えば、修繕積立金だけではない。

この30年間で、消費税が10%に。物価も7.5%アップ、火災保険料はまた2022年にも大幅に値上げになる。すべて合算すれば、管理費会計はこの30年で約20%程度も目減りしている。

修繕積立金は仮に不足しても、工事を延期する、工事範囲を見直すなどで調整はできる。管理費会計の場合は、極論をいえば、共用電気料や管理委託費が払えないことになる。火災保険料も重荷だから止めてしまおうという話まで出てきてしまう。資金繰りがショートした途端、暮らしに関わる電力会社・メンテナンス会社・管理会社などの多方面からの信用や信頼が失われ、マンションでの生活ができなくなるということだ。そんな前兆ともいえる単年度赤字に陥っている管理組合は決して少なくはない。

一方で、管理費の値上げの話しは、暮らし方や境遇、また経済的事情の違いなど、マンション内に“高齢化型多様性”が広がってしまうと、月額2千円・3千円程度の値上げであったとしても難しくなる。理事会が境遇を察して「あの人に申し訳ない」「議案にしても大反対され否決されてしまう」などと考えあぐねてしまい、議案にもしないケースは多いものだ。

管理費会計に繰越余剰金が幾ばくかあり、数年は単年度赤字でも持ちこたえられるうちは良いが、毎年理事が入れ替わるうちに手を打つべきタイミングが忘れ去られれてしまう。それを数年繰り返していると、必ずいつか虎の子の繰越余剰金がなくなる時が来る。そうなると、ひたすら盲目的な節約策に走り、それでも足りなければ修繕積立金会計からひとまず借りようという、軌道修正が難しくなる状態にまで陥ってしまうことになる。

なぜ、こうなってしまったのか。
管理組合自身が“高齢化型多様性"という現象に対して真摯に向き合い、対話を重ね合意形成を図っていかなければ、このような事態に陥る可能性も大いにあるということを認識しておかなければならない。

高経年マンションの理事のなり手不足が発端にある日本版の“第三者管理方式”の話もしたが、もし、マンション管理の専門家が“第三者管理”を担うのであれば、この“高齢化型多様性”という現象に対して、真摯に向き合い、対話を重ね合意形成を導いていってもらいたいと思う。

この記事の執筆者

丸山 肇

マンション管理士。株式会社リクルートにて住宅情報北海道版編集長、金融機関への転籍を経て、大和ライフネクスト入社。管理企画部長・東京支社長などを歴任。現在は、マンションみらい価値研究所にて、マンション元気ラボ主筆コラムニストとして活動。

丸山 肇