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2024.6.13

マンション標準管理規約改正~規約原本と現に有効な規約~

組合運営のヒント

管理規約・細則

管理規約は2つしかない

令和6年(2024年)6月、国土交通省からマンション標準管理規約の改正が公表された。改正箇所は複数あるが、今回は最も質問の多い「第72条 規約原本等」の条文について改正の目的や管理組合のとるべき選択肢について考えてみたい。

新築マンションを購入すると、区分所有者全員が分譲会社から1冊の管理規約集を渡される。こうしたことから、管理規約集は常に住戸数と同じ数だけ同じものが存在していると思っている区分所有者は多い。

しかし、それは違う。実は、マンション標準管理規約でいう管理規約とは「規約原本」と「現に有効な規約」しか存在しない。分譲当初に渡される管理規約集は、規約原本と同様の内容を記載したコピーにすぎないのだ。

わかりやすくするため、管理規約の種類を表にした。
 

管理規約の種類

この表からわかるように、実は区分所有者の手元にある管理規約集には何の規定もないのだ。
 

「現に有効な規約」の考え方いろいろ

規約原本の作成後、管理規約が改正されるたびに「現に有効な規約」を作成する必要がある。規約原本同様に、1冊あればよい。

そうはいっても、住戸数分の管理規約集が存在すると思っている区分所有者からは「管理規約が改正されたのに、最新版の管理規約集が届かない」「改正後の管理規約集をもらえますか」などの問い合わせはよくある。

さらに「いくら閲覧できるとはいえ、管理規約が改正されたのに、区分所有者に新しい管理規約集を配布しなくてもいいのか」という疑問を持つ人もいるだろう。

また、「現に有効な規約」については、誤解が生じやすい点がある。標準管理規約第74条の「1通の書面」の考え方は2通りあるとされていることだ。

A.まるごと作り替える
例えば、管理規約第15条に「駐車場の使用は区分所有者に限る。」という条文があったとして、総会にて、「駐車場の使用は区分所有者及び占有者に限る。」という条文に変更されたとしよう。この考え方では、今まで存在していた管理規約(冊子)の第15条を書き換えてから、変更のない条文も含めてまるごと1冊プリントアウトしなおし、理事長が署名したうえで、これを現に有効な規約とする。
 

(完成後の「現に有効な規約」イメージ)

B.どんどん追加する
この考え方では、管理規約とは別の1通の書面に変更箇所を追加し、理事長が署名したうえで現に有効な規約とする。紙はバラバラであるが、ひとまとめにしておく。つまり、改正があるたびに、どんどん分厚くなっていく。

(完成後のイメージ)

今回のマンション標準管理規約の改正では、このA.Bの方法のうち、Aの方法を推奨している。ただし、Bを否定しているわけではない。
確かにAの方が分かりやすいというメリットがある。しかし、過去にどのような改正がされてきたのかという履歴は分かりにくくなる。Bはその逆だ。メリットとデメリットをよく理解して選択するようにしたい。

【参考】
(規約原本等)
第72条この規約を証するため、区分所有者全員が書面に記名押印又は電磁的記録に電子署名した規約を1通作成し、これを規約原本とする。
2 規約原本は、理事長が保管し、区分所有者又は利害関係人の書面又は電磁的方法による請求があったときは、規約原本の閲覧をさせなければならない。
3 規約が規約原本の内容から総会決議により変更されているときは、理事長は、1通の書面又は電磁的記録に、現に有効な規約の内容と、その内容が規約原本及び規約変更を決議した総会の議事録の内容と相違ないことを記載又は記録し、署名又は電子署名した上で、この書面又は電磁的記録を保管する。
(以下略)
 

コピーを配るのか、配らないのか

管理規約の改正の度に、管理規約集を配布しなくても良いとされているのは、次のような理由であろう。

管理規約の改正は総会の特別決議事項であり、総会議案書、議事録にその条文や決議の可否が記載されて区分所有者に配布される。つまり、「改正条文は配布した議事録等で確認できますよ」ということだ。

そうはいっても、総会議案書や議事録をすべて保管している区分所有者はどれくらいいるだろうか。捨ててしまった区分所有者も多いのではないだろうか。

A.丸ごと作り替えるにしても、B.どんどん追加するにしても、全戸に配布するにはコピー代や印刷代がばかにならない。こういった費用面の問題もあり、多くの管理組合は、規約が改正される度にコピーを配布することはしていない。

一方で、区分所有者に共有をするためのちょっとした工夫をしている管理組合もある。その事例を紹介しよう。

区分所有者に配布する管理規約集のアイデア

①バインダー方式
初回のみ管理規約集をパンチ穴のあいたバインダーに綴じ込んで配布する。変更箇所がある場合は、該当ページだけ差し替えることができるようにする。ただし、大幅な追加があった場合、数ページにわたって差し替える必要が生じることもある。最初に管理規約集を作成するときは、1ページ内の行数は少なめにしておくことが必要だ。

また、バインダー方式にしても、配布された新しいものをどんどん上から追加してしまい差し替えない人や、捨ててしまう人もいるだろう。総会の度に管理規約集を持参してもらうようにし、それが最新のものかを確認している管理組合もある。

②インターネットにアップ
管理組合用のホームページなどを運用している場合は、そこにアップしておく。電磁的方法について規定がない管理規約であっても、ホームページ上で写しを共有することは問題ない。

③たまったら印刷
管理規約が改正される度に印刷するのではなく、ある程度改正履歴がたまってから印刷しなおす、という管理組合もある。また、中にはそのタイミングをマンション標準管理規約の改正時と決めている管理組合もある。

区分所有者が管理規約集を手に取るときの多くは、何かがあったときだ。そのときに最新版の管理規約が手元にないと、例えば手続きミスであったり、他の区分所有者とトラブルになったりする可能性もある。閲覧請求のほかにも、できる限り簡単に最新版を確認できるような工夫は必要だろう。

マンション標準管理規約の改正履歴は、平成9年、平成16年、平成23年、平成28年(平成29年に追加あり)、令和3年である。この標準管理規約にあわせて管理規約を改正したのはいつだろうか。また、新しい管理規約を冊子などにして区分所有者に配布したのはいつだろうか。もし、長い期間が経過しているなら、今回のマンション標準管理規約の改正にあわせて、冊子の作り直しも検討してみてもよいだろう。

※2022.12.15公開
※2024.6.13更新

この記事の執筆者

久保 依子

マンション管理士、防災士。株式会社リクルートコスモス(現株式会社コスモスイニシア)での新築マンション販売、不動産仲介業を経て、大和ライフネクストへ転籍。マンション事業本部事業推進部長として主にコンプライアンス部門を統括する傍ら、一般社団法人マンション管理業協会業務法制委員会委員を務める。

久保 依子

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