HOME > 講演・セミナー実績 > マンション総合EXPO 2021にて特別講演 『マンション管理適正化法の改正が、“管理”と“中古マンション市場”を変える!?』

2021.11.26

マンション総合EXPO 2021にて特別講演
『マンション管理適正化法の改正が、“管理”と“中古マンション市場”を変える!?』

10月7日・8日、東京ビッグサイトにて『マンション総合EXPO 2021』がリアルとオンライン両面で開催。関連企業160社が出展し、2日間合計8,000名を超える来場者で賑わいました。

8日(金)にはマンション元気ラボの主筆コラムニストの丸山が、『管理計画認定制度』に焦点を当てたパネルディスカッションに登壇しました。

約50名の聴衆が集まったパネルディカッション

約50名の聴衆が集まったパネルディカッション

会場内で行われた特別講演では、『マンション管理適正化法の改正が、“管理”と“中古マンション市場”を変える!?』と題したパネルディカッションを開催。パネリストに株式会社さくら事務所・執行役員でマンション管理コンサルタントの土屋輝之氏、管理組合向けの情報サイト「マンション管理の教科書」代表でマンション管理士の永井和也氏を迎え、当サイト主筆コラムニストの丸山肇氏がモデレータとなってトークセッションを展開しました。

パネリスト・土屋輝之氏

パネリスト・土屋輝之氏

パネリスト・永井和也氏

パネリスト・永井和也氏

モデレータ・丸山肇氏

モデレータ・丸山肇氏

※本記事記載の写真は、すべてイベント主催者の許諾を得て撮影しています

最初に丸山氏は、2020年に改正された「マンション管理適正化法」の概略を説明。「今回の改正では『管理計画認定制度』が創設され、行政が管理組合により強くコミットし、自立を促す格好になった。この認定基準が、今後管理組合自らマンション管理の品質改善に向けて努力するための目標となるであろう」と強調しました。

続けて永井氏は「日本のマンションの平均築年数はすでに25年を超え、区分所有者の約半数が60歳以上という、いわゆる『二つの老い』が進行している状況。区分所有者の高齢化は高経年マンションでの『理事のなり手がいない』『管理運営そのものが困難になる』という問題を深刻化させるだろう」と提起。その上で「重要となるのは、管理の状態を良好に維持し、新たな住民となる若い世代に選ばれるための居住価値を高めること。法改正により管理計画に関する認定基準が設けられたことは、マンションの持続可能性への意識を高めるうえでも意味があることではないか」と意見を述べました。

不動産仲介業の経験を持つ土屋氏は、「マンションに管理不全の予兆があっても、購入検討者が外から見てそれを判別するのは難しい。また購入時の窓口となる仲介業者も、不動産仲介業と管理業ではその専門性が大きく異なるが故に、一般的には管理や設備の状況をあまり把握していないのでは」と指摘。資産価値はアドバイスできても、しっかりとマンションの居住価値についてまで語れる人は少ないという見解を示しました。

「管理計画認定」は、希望する管理組合が任意で申請し、一定の基準を満たせば取得することができます。認定を受けた事実はWEBなどで公表され、マンション売却時などには、それが有益になると期待されています。その認定基準の一つの判断材料となっているのが、長期修繕計画の内容。「長期修繕計画は見直すこと。また7年以内で定期的に実施すること」「長期修繕計画の期間は、30年以上、かつ残存期間内に2回の大規模修繕工事が含まれていること」「国土交通省の長期修繕ガイドラインに準拠していること」と定められており、それを当たり前の基準とみるか、高いハードルとみるかは判断が分かれるところです。

これについて永井氏は「誰かに作ってもらった長期修繕計画を、見直しもせず形骸化させるのでは無意味。自分たちの意向や考え方に合わせてカスタマイズし、さらに7年目には説明会などを開催して、十分な理解を得たうえで総会承認を得ることが求められている」と説明。マンションの将来ビジョンを含めて、より広い視野を持ち、管理組合全体で共通認識をもつことの重要性が、その行間から読み取れるとしました。

「認定基準の行間を読み取る」ことについては、土屋氏も次のように言及。「これまでは『国土交通省のガイドラインに則って作成されることが望ましい』とされていた長期修繕計画が、認定基準をクリアするためには『準拠している』必要がある。そのためには形式だけをガイドラインに寄せるのではなく、管理組合全員で深く内容を理解し、長期修繕計画を通じマンションの将来ビジョンを共有することの意義が強調されている」としました。

「マンションの購入予定者にとっては、管理計画認定制度により管理品質という基準が明確化され、それが安心と判断のよりどころになる。また仲介業者にとっては、マンションの中古流通市場がより成長・成熟へ向かって発展するための原動力になる。そして何より区分所有者や管理組合にとっては、居住価値の向上や高齢化問題の解決につなげるためのヒントになるだろう。定着するまでには時間と労力はかかるかもしれないが、来年4月に迫った制度の開始によって、マンション管理に明るい未来がやってくるのでは」と、トークセッションを締めくくった丸山氏。50名の聴衆から、大きな賛同を得ていました。

この記事の取材者

杉崎 孝志