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2024.5.9

第17回 マンションみらい価値研究所セミナー「マンション管理の法改正の移り変わりとこれからの課題」

4月18日(木)、第17回となるオンラインセミナーが開催された。今回はゲストに弁護士の篠原みち子先生をお招きし、「マンション管理の法改正と移り変わり」と題しお届けした。司会とナビゲートは、マンションみらい価値研究所・所長の久保依子。今後のマンションがどうあるべきか、またどんな課題があるのかなどについて対談形式で解説した。
 

実際、久保自身も法律家がマンション管理の現場に携わることを多く経験している。たとえば区分所有法の制定や標準管理規約の制定といった業界全体に関わる大掛かりなものから、個々の集合住宅で起こる漏水や騒音トラブル、区分所有者間の内部紛争といったものに至るまでさまざまだ。

区分所有法が制定された当初は、管理室が不動産会社か管理会社名義になっていたり、共用部分である駐車場を不動産会社が売買をするなどといったことがあり、関連した紛争も珍しくなかったと振り返る。

さらに後々困ったこととしては、等価交換による旧地権者を優遇し、旧地権者に専用使用権を広く認めたり、管理費等の負担割合を安く設定したりしているケースがあり、管理組合での解決が困難になったことなどがあったという。

こうした過去の事例を参考に、区分所有法や関連法、管理規約などが整備されてきた。さらには判例の集積なども関係して、かつては多かったペットの飼育や騒音に伴うトラブルは、昨今では主たる課題に挙がらなくなってきている。

では、どういったタイミングでマンション管理に関する法律が制定または改定されてきたのだろうか。その歴史について久保が解説しながら、篠原先生と振り返った。

上記は、昭和37年(1962)に区分所有法が制定された年から、日経平均株価の変動を横軸とするグラフであり、国内景気とマンション管理に関する法制定を俯瞰するものだ。注目すべきは昭和57年(1982年)に「中高層共同住宅標準管理規約」が制定されたこと。これは、各不動産事業者によって不適切なルール設定が管理規約などを用いて行われていたことに対し、業界に対する指針を示すという位置づけであった。

昭和58年(1983年)に区分所有法は大改正され、今日の骨子ができあがった。ところが、この直後にバブル景気が起こりマンションは乱立。ペット飼育者が増えたことやリゾートマンション開発などもあり、景気を反映するように移りゆくマンションの形態に合わせて法の改正が行われてきた経緯が見受けられる。

マンションの形態だけではなく、平成7年(1995年)に発生した阪神・淡路大震災といった災害を受け、「被災マンション法」「耐震改修促進法」などが新たに制定されるなど、区分所有者を守る法律が必要であることにも気付かされた過去がある。

平成12年(2000年)には「マンション管理適正化法」の制定、平成14年(2002年)にも区分所有法の改正があり、ここで大規模修繕が過半数の決議で可決となった。

ちなみにこの平成12年の適正化法制定では、これまでの「集合住宅」の名称から「マンション」という和製英語が法律用語として正式に採用されているのにも注目だ。

その後も、構造計算書偽造による刑事事件を起こした「姉歯事件」や、「東日本大震災」などを経てその都度法改正などが行われていることに鑑みると、少子高齢化をはじめとする現代の日本の現象を受ける形で今後も法律は変わっていくはずだ。
また、これから予定されている区分所有法の改正の中でも、新設が予定されている「専有部分財産管理人制度」について、篠原先生に実際に裁判になった事例の紹介を交えながら解説をしていただいた。現行法では、ひとたびゴミ屋敷となれば、その解決は非常に難しい。こうした課題の解決に区分所有法の改正が特効薬になるのかという問いにはいくつかの疑問点の指摘がなされた。

マンション建設ラッシュの時代に建てられた多くのマンションの老朽化をはじめ、空き家や認知症居住者の増加、(高齢者のみの世帯の増加を含む)家族形態の変化など日本は新たな課題に直面している現状がある。今後、マンション管理不全や建物の老朽化の課題が多発することが予測され、その都度、マンション管理を取り巻く法律は時代に合ったものに移り変わっていくだろう。

次回は5月22日(水)16:00から「防災の根幹問題を理解し、何をすべきかを考える」と題し配信を予定している。
 

この記事の取材者

浅井ユキコ