HOME > 講演・セミナー実績 > 第18回 マンションみらい価値研究所セミナー 「防災の根幹問題を理解し、何をすべきかを考える」

2024.6.12

第18回 マンションみらい価値研究所セミナー
「防災の根幹問題を理解し、何をすべきかを考える」

5月22日(水)、第18回となるオンラインセミナーが開催された。今回はゲストに東京大学生産技術研究所 教授 加藤孝明先生をお招きし、「防災の根幹問題を理解し、何をすべきか考える」と題しお届けした。司会とナビゲートはマンションみらい価値研究所・所長の久保依子。今年の元旦に発生した「令和6年能登半島地震」や「熊本地震」、「糸魚川市の火災」など、日本で多発する災害に焦点をあて、マンションに住む人々が何をすべきかについて議論する対談形式で行われた。

<ゲストPROFILE>
加藤孝明
東京大学生産技術研究所・教授
東京大学社会科学研究所・特任教授

都市計画、まちづくり、地域安全システム学、防災、復興準備を専門領域に、災害シミュレーション等の数理的・工学研究を行っている。また「防災【も】まちづくり」を提唱し、防災を基軸とした総合的な地域づくりを志向し研究活動・実践活動に取り組んでいる。
携わった活動の受賞歴に、
●防災まちづくり大賞総務大臣賞(葛飾区新小岩)
●レジリエンスアワード2018グランプリ(伊豆市土肥)
●国土交通省先進的街づくりシティコンペにて受賞(徳島県美波町伊座利集落)
その他にも
●日本建築学会奨励賞
●地域安全学会論文賞
●日本都市計画家協会楠本賞
●都市住宅学会論説賞
●地区防災計画学会論文賞
●日本都市計画学会計画設計賞 等


加藤教授は現在、東京大学内において理科系の「生産技術研究所」と文科系の「社会科学研究所」に所属し、多角的に防災を捉えながら、専門である都市計画やまちづくりの観点で防災を主軸とした地域づくり・暮らし方を研究・施行しているという。

そんな加藤教授の講義を受けた久保が、第一声で「大きな災害が頻発している中、私たちも災害に対する向き合い方が進んでいると思いきや、『公助』でやってくれるべきだという間違った認識になっていた」とコメント。加えて「行政が災害を防げなかった際に謝罪会見をしているのも、当然のように思って見ていた」とも。

これらの感想に、今回のセミナーにおける最も重要なポイントが詰まっているといえる。

大規模震災が起きるとニュースでは、学校体育館などの避難施設に多くの人が収容されている映像や、炊き出し・給水・ボランティア活動の映像が流れ、多くは「公助」のシーンが多く採用されている。「被災しているのだから当たり前」という発想があるが、加藤教授はこれを「常識の中の非常識」という言葉を用い解説している。

その一例として「被災したら被災地に留まって、不自由な被災生活を送る」ことももしかしたら常識の中の非常識であるかもしれない。また「被災者は被災者らしくという意識が働くこともあり、コンビニで水を買うことができても、ボランティアがせっかく運んでくれた水を有難そうにいただく」ことも常識の中の非常識であるかもしれない、と説明した。

こうした視線を持って考えてほしいというのが加藤教授のメッセージであるのだが、対談の際に久保が「私たちマンション管理会社では、地震発生時に被害の状況や復旧時期の目安など、住民に知らせた方が良いと思われる情報を分かる範囲で掲示している」と紹介すると、加藤教授は「とても親切である一方で、行政と同じで管理会社に任せておけばなんとかしてくれるといった、『公助』があたり前だという錯覚が生まれる懸念もある」とコメント。

そのうえで加藤教授は、住民が災害を自分事に捉えられるように「居住者のみんなで災害を頑張って乗り越えよう」というメッセージを追加したらよいのではないかと提案した。

また、久保は自身の実体験として「趣味でサーフィンをしているが、サーファーは波に乗っていると地震に気付けない。なので、地面にいる人がサーファーに向かって「(地上へ)上がれ〜!」と声掛けする。それを受けたサーファーが次々大きな声で伝達し合うという仕組みになっている。実はこの伝達方法が、防災無線よりも早く海にいる人に届く」と解説。つまり、こうした自助ルールがコミュニティに文化として根付いていることこそが理想であるはずだと語った。

災害のリスクを認識していながらも、思うように防災活動が進まないといった課題を抱えているマンションも多い。久保から「どのようなときに防災について考えるようになるのか」と質問すると、加藤教授は「(講義の中で)延焼運命共同体という話をしたが、マンションはまさしく運命共同体。電気が通らなくなればみんな電気が使えなくなるし、水が出ないとなればみんな水が使えなくなる。自分たちが同じ空間を共有する運命共同体であると認識することで、防災を考えるきっかけになる」とアドバイスをした。

まとめとして加藤教授は「防災の根幹問題は、桁外れに大きい需要に対して桁外れに少ない資源しかないというアンバランスが原因。このバランスを是正していけば、災害を難なく乗り越えられるようになる」と述べ、やるべきことは「需要を減らす、資源を増やすという、この2つに尽きる」とした。

次回は6月13日(木)16:00から「賃貸仲介の現場からひも解く入居者ニーズ〜マンションの管理状況は大事な判断基準〜」と題し配信を予定している。

この記事の取材者

浅井ユキコ