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2020.9.29

昭和57年版から平成29年版まで
中高層共同住宅標準管理規約、マンション標準管理規約を見える化する

マンションの法制度

昭和57年版から平成29年版まで 中高層共同住宅標準管理規約、マンション標準管理規約を見える化する

 マンションの管理の適正化の推進に関する法律(以下「適正化法」とする。)が改正され、現在、国土交通省は委員会(注1)を設置し、適正化法改正で新たに規定される「マンション管理計画認定制度における認定基準」の検討を行っている。また、一般社団法人マンション管理業協会は「マンション管理適正評価制度(注2)」を検討している。いずれの制度も、マンション標準管理規約に準拠した管理規約であることが認定や評価のひとつのポイントとなるようである。
 中高層共同住宅標準管理規約、マンション標準管理規約(以下「標準管理規約」という。)は、昭和57年に公表され、その後、昭和58年、平成9年、平成16年、平成23年、平成28年、平成29年と改正されている。しかし、昭和57年、昭和58年、平成9年版の標準管理規約は、筆者らが検索した限りでは、国土交通省、旧建設省のホームページからもすでに削除されており、確認することができなかった。
 平成16年以降の標準管理規約は、改正前と改正後の新旧対照表は、国土交通省のホームページにも、添付されている。しかし、複数回をまたがる対照表は公開されていない。それ以外のホームページ上でも、すべての改正をひとつにまとめた形式ですべての改正を対象にした資料は筆者らが検索した限りでは存在していない。
 管理規約の改正に携わる実務家の方々のために昭和57年から平成29年までの標準管理規約を一覧化し、ダウンロードして活用できるようにした。これにより各条文がいつ、どのように改正されたのか一目瞭然となった。

標準管理規約昭和57年から平成29年まで対照表


(注1)マンション管理の新制度の施行に関する検討会 国土交通省ホームページ
(注2)マンション管理適正評価制度 広報資料 一般社団法人マンション管理業協会

1.昭和57年、昭和58年版の標準管理規約

 当社受託管理マンションのうち、昭和57年、昭和58年当時に原始規約が作成されたと思われるマンションを調査した。昭和57年版は翌年に改正されていることから、これを参考にしていると考えられる規約はなかった。
 昭和57年版は、区分所有法が改正になる前に公表されたものであり、昭和58年版と下記の2点が大きく異なっている。

表

2.標準管理規約の追加を数値化

 標準管理規約の「分量」の推移を測るために、改正年毎の「条」、「項」、「号」のそれぞれの数を数値化した。
 平成16年版では、「電磁的方法が利用可能である場合」が追加され、項の数が20%増加している。また、平成29年の最新版への改正時も17%以上の増加率である。この2回の改正が大きかったことが分かる(図1参照)。

図1:標準管理規約 条・項・号の記載数推移

3.改正のない条文

 昭和57年当時から平成29年までの間で、改正のなかった条文は下記の18条文のみである。それ以外の条文は何らかの改正が加えられている。
 第1条 (目的)
 第4条 (対象物件の範囲)
 第8条 (共用部分の範囲)
 第13条 (敷地及び共用部分等の用法)
 第14条 (バルコニー等の専用使用権)
 第17条(昭和57年)・第18条(平成29年) (使用細則)
 第19条(昭和57年)・第20条(平成29年) (区分所有者の責務)
 第29条(昭和57年)・第30条(平成29年) (組合員の資格)
 第30条(昭和57年)・第31条(平成29年) (届出義務)
 第37条(昭和57年)・第39条(平成29年) (副理事長)
 第40条(昭和57年)・第42条(平成29年) (総会)
 第53条(昭和57年)・第56条(平成29年) (会計年度)
 第54条(昭和57年)・第57条(平成29年) (管理組合の収入及び支出)
 第56条(昭和57年)・第59条(平成29年) (会計報告)
 第58条(昭和57年)・第61条(平成29年) (管理費等の過不足)
 第59条(昭和57年)・第62条(平成29年) (預金口座の開設)
 第60条(昭和57年)・第63条(平成29年) (借入れ)
 第65条(昭和57年)・第71条(平成29年) (規約外事項)

 つまり、昭和57年版にて原始規約が承認され、それ以降、標準管理規約に準拠することを目的として改正がされていない場合は、管理規約の40条文以上の見直しが必要となる。ほぼ全面改正が必要であると言ってもよいだろう。管理規約の改正にあわせて、使用細則も同時に見直すならさらに改正箇所は増加する。
 マンション認定制度、評価制度にあわせて管理規約を改正しようとするなら、早めに検討を開始したほうがよいと考えられる。
 ただし、最新版の標準管理規約に改正することが必ずしもそのマンションにとって最良の選択肢であるかは、よく議論していただきたいと考えている。昭和57年当時の分譲マンションでは、文字通り管理組合は「構成」するものではなく「結成」するものとして、分譲前から区分所有者の予定者により管理規約が作成されている事例もあると聞く。そうした、分譲当時から区分所有者の目指した住環境は、標準管理規約に準拠するよりも優先されるべきものも多いのではないか。新設される各制度において、こうしたマンションの歴史が低く評価されることがないように願う。

この記事の執筆者

田中 昌樹・久保 依子

田中 昌樹
マンションみらい価値研究所研究員。一般社団法人マンション管理業協会出向中。現在は、マンションみらい価値研究所にて、防災・減災に関する統計データの活用や居住者の高齢化や災害の激甚化などの社会的な課題について、調査研究や解決策の検討を行っている。

久保 依子
マンション管理士、株式会社リクルートコスモス(現株式会社コスモスイニシア)での新築マンション販売、不動産仲介業を経て、大和ライフネクストへ転籍。マンション事業本部事業推進部長として主にコンプライアンス部門を統括する傍ら、一般社団法人マンション管理業協会法制委員会委員を務める。

関連情報 参考文献

●「マンション法」読本 丸山英気編 1984年5月 三嶺書房
● 住宅金融月報 1982年 №363 住宅金融公庫
● マンションの法律第3版 玉田弘毅著 1986年12月 一粒社 
● 宅地建物の取引の校正と流通の円滑化を図るために宅地建物取引業制度上講ずべき措置についての第二次答申 1982年 住宅宅地審議会

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