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2024.6.6

マンション管理業22社を独自視点で徹底分析
これからの管理会社の戦略とは

管理委託

マンション管理業22社を独自視点で徹底分析 これからの管理会社の戦略とは

 マンション管理会社はとかく受託管理戸数だけで比較されがちである。
 しかし、マンション管理業協会のホームページには、そればかりでなく管理会社各社の財務状況、従業員の資格保有状況など実にさまざまな情報が掲載されている。
 よく、雑誌などで「マンション管理会社ランキング」と称して順位付けがされているが、そうした情報よりさらに詳細で項目数も多い。
 今回のレポートは、管理会社の公開情報をもとに分析することにより、マンション管理業という業種の特長や、各社の戦略の違いなどを検討しようとするものである。ただし、分析結果によって管理会社をランク付けしようとするものではない。マンション管理のプレイヤーのひとつであるマンション管理会社についての理解が深まることを期待したい。

2.調査した管理会社

 上記に掲載されている会社から、社名が一般的によく知られている、管理戸数が多い、売上高が高い会社を22社抽出した。
 なお、2024年4月25日から2024年5月4日にかけて掲載されている情報をもとに作成している。決算情報については主に令和5年度のものである。

3.調査項目

設立年月日 資本金
総合管理 組合数、棟数、戸数
部分管理 組合数 棟数 戸数
財務状況 総資産 自己資本 総売上高(内マンション管理部門売上高)営業損益 経常損益
本社・営業所等の数

4.調査結果

①マンション管理業者の専業度合い

 マンション管理会社は、マンションばかりでなく、オフィスビルやホテル、その他の商業施設など他の建物の管理業も営んでいる場合がある。それとは反対にマンション管理業を専業とする会社もある。調査した22社の売上高におけるマンション管理業比率は次の通りである(図1参照)。

図1

②マンション管理会社の設立年

 区分所有法が制定されたのは1962年、今からおおよそ62年前のことである。区分所有法をもとに分譲マンションが一般的になったこと、会社として収益を上げるためには一定規模の受託が必要であることを考えると、設立から50年以上経過している管理会社は業界内ではいわゆる「老舗」であると言えるだろう。調査した22社の設立時期は次の通りである(図2参照)。
 なお、マンション管理業界では同業者間の合併が繰り返されている。合併の場合、存続会社と消滅会社があり、例えば消滅会社のほうが設立の時期が古くても、存続会社の設立時期が当該会社の設立時期となる。また、分社化した場合は、その段階が設立年となる。H社は分社化された例である。

図2

③マンション管理会社の経常利益率

 公開されているデータでは、マンション管理業のみの経常利益は明らかではないため、その他の管理事業も含めた利益率を算出した。利益率が突出しているI社、N社を除くとおおむね6%前後あたりが業界水準と言える(図3参照)。

図3

④自己資本比率

 総資産を総資本と同額として自己資本比率を算出した(図4参照)。

図4

 マンション管理業は「サービス業(その他のサービス業)」に分類されると考えられる。サービス業の平均的な水準はどのくらいだろうか。経済産業省が公開しているデータをもとに、当研究所にて各産業別の自己資本比率を算出してみた。平均では29.1%である(図5参照)。上記22社平均は49.32%であるから、産業別ではかなり高い水準にあると考えられる。

図5

政府統計名        経済産業省企業活動基本調査
詳細
提供統計名        経済産業省企業活動基本調査
提供分類1         統計表一覧-速報(概況)
提供分類2         2023年企業活動基本調査速報ー2022年度実績ー      
提供周期             年次

⑤従業員1名あたりの生産性

 マンション管理業に従事する従業員の1名当たりの生産性はどのくらいか。
 各社別の売上高を次の式で算出し比較した(図6参照)。
 マンション管理事業従業員1名あたりの売上高=
マンション管理業に関する売上高/マンション管理業に従事する従業員の人数
 

図6

 突出しているT社は、ワンルームマンションの管理を主力としている会社である。ファミリーマンションと比較すると、総会や理事会の開催数が少ないことから、1名のフロントが多くのマンションを担当できると言われている。こうしたことが従業員1名あたりの生産性に現れていると考えられる。

⑥総合管理と部分管理の受託状況

 総合管理とは、マンション管理適正化法に定める基幹事務を含む業務を受託している管理方法である。多くのマンションでは、管理会社1社と管理組合の間で管理委託契約を締結し、国土交通省のマンション標準管理委託契約書に例示されているような、事務管理業務、管理員業務、設備管理業務、清掃業務を受託している。
 一方、部分管理は基幹事務を受託せず、例えば設備管理業務と清掃業務のみを受託するといった文字通り一部分のみを受託する方法である。部分管理は、管理会社1社ではなく、他に基幹事務を行う管理会社と共同で管理するケースのほか、自主管理マンションの清掃部分のみを受託するケースなどがある。
 総合管理の受託戸数が多い管理会社でも、部分管理の受託には消極的な会社が多いことがわかる(図7参照)。
 
 管理会社を比較する指標として最も多く採用されているのが「総合管理の管理戸数」である。つまり、部分管理はどんなに積極的に受託しても、比較の指標として利用されない。こうしたことから、その受託にはあまり積極的でない会社もある。部分管理の受託状況の差異は、管理会社各社の営業戦略上の違いであると考えられる。

図7

⑦本社、営業所等の数

 マンション管理業に限った話ではないが、営業所展開の方法には各社の経営戦略が表れている。
 営業所などの組織の数を増加させれば、その分オフィス賃料などの固定費がかかる。しかし、災害等において少しでも早くマンションに到着しようとするなら、営業所数を増加させたほうが顧客ニーズに応えやすい。こうしたメリット、デメリットをまとめると次のようになる(表1参照)。

表1

 マンション管理会社各社は展開型、集約型のどちらを採用しているのだろうか。総合管理戸数と本社・営業所等の数を集計した(図8参照)。
 おおむね、C社、G社が集約型、М社、N社が展開型と言える。

図8

5.これからのマンション管理業

 収益を目途とする企業運営では、労働生産性を上げ、従業員1名あたりの売上高をどう上げていくか、ということが課題になると思われる。しかしながら、図6を見る限りは、ファミリー型分譲マンションを主力としている管理会社ではそう大きな差がない。つまり、現状のビジネススキームは大同小異で、仕事のやり方もほとんど同じであると言える。
 どのような業界でも直面している課題であるが、これから日本の労働人口が減少していく中で、マンション管理業でもまた労働力不足が顕著になっていくことは確実だ。生産性の向上のために、これから各社がどのような戦略をとっていくか、事業の多角化を図れば、図1の売上高比率が変わってくるであろうし、労働集約型産業としての成長をねらうのであれば、図8の営業所数は減っていくであろう。
 従前より、マンション管理業は「大当たりもしないが、大損もしない」業界であると言われてきた。しかし、その安定性もそれを支える従業員が不足すれば成り立たない。業界全体で仕事のやり方を変革していく時期に来ている。

この記事の執筆者

久保 依子

マンション管理士、防災士。株式会社リクルートコスモス(現株式会社コスモスイニシア)での新築マンション販売、不動産仲介業を経て、大和ライフネクストへ転籍。マンション事業本部事業推進部長として主にコンプライアンス部門を統括する傍ら、一般社団法人マンション管理業協会業務法制委員会委員を務める。

久保 依子

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