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2024.6.20

標準管理規約では表現しきれていない条文
~管理費の端数処理、委任状の作り方、総会の開催月~

管理規約・細則

標準管理規約では表現しきれていない条文~管理費の端数処理、委任状の作り方、総会の開催月~

 多くのマンションが国土交通省の「マンション標準管理規約」をもとに管理規約を作成している。結果としてどのマンションに住んでもおおよそのルールは同一になっている。このことはマンションを購入しようとする人からすると安心感があるだろうし、国がマンションに関する政策を推進しやすいというメリットがある。
 ただし、「標準管理規約そのまま」では、実務上の運営が難しい条文や、さらに深く検討しておかないとトラブルにつながりかねない条文もある。
 今回はこうした標準管理規約では表現しきれていない条文を紹介しよう。これから管理規約を改正しようとする場合に、あわせて検討してみてはどうだろうか。

1.管理費等の金額は共有持分割合、では端数は何円単位?

 積立金の負担額は、共有持分割合によるものとされている。積立金はおおよそ下記の計算式で算出できる。
 
 住戸の積立金=一定期間に必要な修繕工事費の総額÷総共有持分×住戸の共有持分
 
 しかし、標準管理規約では、「割り切れない場合」が想定されていない。実際に上記の計算すると小数点以下の数字が算出され、きれいに割り切れないことがほとんどだ。区分所有者に請求するためには、端数をどこかの単位で四捨五入なのか、切り上げなのか、そうした端数を処理しなければならない。
 その端数処理はどの単位でされているのかを調査した(図1参照)。
 
【対象】
 当社受託管理マンションのうち、4,226件の積立金請求データを無作為抽出
【凡例】
 ・1円単位の例 1,998円など
 ・10円単位の例 1,990円など
 ・100円単位の例 1,900円など
 

図1

 最も多いのは10円単位で端数処理である。なお、四捨五入なのか切り上げなのかは調査していない。
 積立金の収納は、標準管理規約通りであれば、現金の持参ではなく口座振替によるものであるから、1円単位であっても、「おつり」を心配する必要はない。公平性を追求するのであれば、1円単位が最も公平である。それでも1円単位を選択する管理組合は少なく、最後が「0」になるように処理されていることがわかる。
 この管理費等の端数はどのように処理するべきか、標準管理規約は何も規定していない。そもそも、標準管理規約には管理費等の額の記載がない。別表に示されているのは持分割合だけである。そのため、端数処理の方法は本文に規定する必要がないのである。
 
 とかく標準管理規約に規定がないと、管理組合ごとのばらつきは大きくなる。独自に「管理費等の額は、共有持分割合で算出した額の10円単位を四捨五入する」と規定しているマンションもあれば、分譲当初の管理費等が10円単位で処理されていたことをそのまま踏襲し、特に規定を置かずに端数処理をしているマンションもある。後者の管理組合の方が圧倒的に多い。管理費等の持分割合は「おおよそ持分割合」なのである。
 
【参考】 標準管理規約(管理費等)
 第25条 区分所有者は、敷地及び共用部分等の管理に要する経費に充てるため、次の費用(以下「管理費等」という。)を管理組合に納入しなければならない。
 一 管理費
 二 修繕積立金
 2 管理費等の額については、各区分所有者の共用部分の共有持分に応じて算出するものとする。
 

2.てんこ盛りの委任状 第46条 議決権

 標準管理規約第46条によれば、区分所有者は次のいずれかの方法により総会で議決権を行使することができるとしている。
 ①総会に出席して、挙手など議長の指定する方法で賛否の意思表示をする。
 ②総会は欠席するが、議決権行使書を提出し、あらかじめ賛否の意思表示をする。
 ③総会は欠席するが、管理規約に定めのある範囲の代理人が総会に出席し、挙手など議長の指定する方法で賛否の意思表示をする。
 ④総会は欠席するが、議長(理事長)に委任して、議長の賛否の意思表示に従う。 

 理事長は総会議案書とともに、総会の開催前までに「この①~④のどれを選択しますか?それぞれの方法によって必要事項を記載して提出してください」という書面を発し、回収することになる。総会の当日に参加する人が少ない場合、この書面の回収率が悪いと、総会が成立しないことさえある。
 管理会社としても、掲示板や管理員からの声掛けなどにより、書面の提出を促している。
 悩ましいのは、この書面の様式である。
 1枚でも多く回収するためには、分かりやすく、目立つ書面である必要がある。
 一方で、区分所有者の手間を減らすために、何度も同じことを書かずに済むようにしたい。さらには、使用する紙の量を減らすために、1枚の用紙にまとめるようにしたい。
 それらをまとめると、おおよそ、以下のような書面になる。
 

書面

 ところが、どんなに工夫をして作成しても、書面に氏名と押印だけしてほかに何も書かずに提出する人がいる。また、「いずれかを選択して記入してください」と書いても、すべての項目に〇を付け、すべてに記入する人もいる。このような書面では、書いた人がどれを選択したのかが分からない。
 さらに、事前に委任状を提出していながら当日の総会に参加する人もいる。このような複数の意思表示があった場合に、区分所有者のどの意思が優先されるべきなのだろうか。意思表示の優劣については、標準管理規約コメントに記載がある。本人の意思をより大きく反映していると考えられるものから順番にならべると次のようになる。
 ①>②>③>④
 つまり、書面で全部に記載した人や、議決権行使書と委任状を2重で記載した人などは、この順序に従って意思を採用するのが一般的だ。ただし標準管理規約には「書面上で複数の意思表示があった場合にこの順番で採用しなさい」と具体的に書いてあるわけではない。トラブルにつながるリスクを減らすために、「複数の記載がある場合には、〇から〇の順で採用します」などと注釈を入れるなど、区分所有者本人の意思が正しく確認できるように書面を工夫しておくことが考えられる。
 
【参考】標準管理規約(議決権)
 第46条 各組合員の議決権の割合は、別表第5に掲げるとおりとする。
 (中略)
 4 組合員は、書面又は代理人によって議決権を行使することができる。
 5 組合員が代理人により議決権を行使しようとする場合において、その代理人は、以下の各号に掲げる者でなければならない。
 一 その組合員の配偶者(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)又は一親等の親族
 二 その組合員の住戸に同居する親族
 三 他の組合員
 6 組合員又は代理人は、代理権を証する書面を理事長に提出しなければならない。
 (略)

3.管理組合の決算月は3月に集中 第56条 会計年度

 日本の多くの株式会社の決算は3月であり、株主総会の開催は6月である。これと同様に管理組合の決算月も3月に集中し、総会の開催も6月がピークである(図2参照)。標準管理規約では、特に何月に決算すべきかという規定はなく、管理組合は自由にその月を決定することができる。
 管理組合でも、株式会社と同様に決算が終了すると監事の会計監査や、総会の他の議案を理事会で審議したりと管理組合も忙しくなる。多くの区分所有者が会社員であることを考えると、何も仕事の忙しい時期に理事会や総会をせずとも、決算月を5月や7月にずらせばよいのではないかとも思う。ではなぜ、マンションの決算月も3月に集中しているのか。

図2

 それは、新築分譲マンションの引き渡しが3月に集中しているからである。3月に管理が開始し、翌年3月までの1年間をマンションの事業年度とすると、おのずと3月決算となる。
 新築マンションを購入する際には、転勤や転校などの時期と重ねたいという購入者の希望は多い。また、分譲会社の決算月も多くが3月末であることから、期中に売上を立てたいということもある。
 しかし、管理が開始しているマンションは、特に3月決算にこだわる必要はないのではないか。例えば、北海道、東北地方では、3月とはいえ室内もまだ寒いだろう。集会室や公民館で開催されることの多い理事会の会場もまた寒いことだろう。これを7月の時期にずらせば、理事の出席率も高くなるかもしれない。忙しくて参加できない理事が理事会に出席できるかもしれない。
 決算月をずらすには、管理規約を改正しなければならず、改正した年度は12カ月での決算はできない。前年度の収支との比較ができないなどのデメリットもあるが、それでも、一度検討してみる余地はあるだろう。
 
【参考】標準管理規約 (会計年度)
  第56条 管理組合の会計年度は、毎年○月○日から翌年○月○日までとする。

4.遅延損害金30%?!それ、いつから請求しますか? 第60条 管理費等の徴収

 標準管理規約第60条、遅延損害金の規定では、「管理組合は、その未払金額について、年利○%の遅延損害金と、違約金としての弁護士費用並びに督促及び徴収の諸費用を加算して、その組合員に対して請求することができる。」としている。
 この〇の中にどのような数字をいれるのかが問題として取り上げられることが多い。もっとも一般的なのは14.6%である。しかし、標準管理規約コメントでは、この14.6%以上を推奨するかのような記載もある。そこで、何%が適切なのか、について議論がされることが多い。
 
【参考】第60条関係 コメント
 滞納管理費等に係る遅延損害金の利率の水準については、(中略)利息制限法や消費者契約法等における遅延損害金利率よりも高く設定することも考えられる。

 今回、ここで注目したいのは、その「率が何%なのか」ではなく、この条文が「できる規定」であるということだ。
 請求することができる、ということは「請求しなくてもいい」ということでもある。つまり、どんなに高率に規定していようが、「あなたに請求します」ということを決定しなければ、遅延損害金を請求しないままで終了してしまうのである。
 この「いつから請求するか」の決定を躊躇する理事会は多い。「もう少し待てば、入金されるのではないか。」「前の滞納者のときは、何か月目から請求したのか、その時と異なるのは不公平ではないか。」そうした「ためらい」に左右されないよう、滞納者に対する遅延損害金の請求は〇カ月目から」という時期をあらかじめ決定しておくことが必要だ。率の議論だけで終わりにしないよう、時期の議論もあわせてしておきたい。
 
 長年の慣習で、特に管理規約や使用細則に規定がなくても「なんとなく」運用されていることがある。誰も異議を述べないうちはよいが、ある時、誰かが「根拠を示してほしい」と要望したことがきっかけで、過去に遡って理事会の対応に問題があるとされるトラブルに発展することがある。あらためて「この業務の根拠はどこに書いてあるか」をその都度確認しておくのもよいだろう。

この記事の執筆者

久保 依子

マンション管理士、防災士。株式会社リクルートコスモス(現株式会社コスモスイニシア)での新築マンション販売、不動産仲介業を経て、大和ライフネクストへ転籍。マンション事業本部事業推進部長として主にコンプライアンス部門を統括する傍ら、一般社団法人マンション管理業協会業務法制委員会委員を務める。

久保 依子

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