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2023.06.20

マンション火災保険と自転車事故



 自転車は手軽な交通手段ですが、その反面交通事故の当事者になりやすいというリスクがあります。
ヘルメットの着用が努力義務化されるなど今注目を集めている自転車をめぐる事故リスクについて、マンション住民の目線から考えてみました。

1)自転車事故の特徴
件数の推移
 日本損害保険協会のデータによると2020年における自転車が関連した交通事故件数は6万8,000件で、10年前の2010年における約15万1,000件から比較すると約半分に減少しています。
しかし、交通事故全体に占める自転車の関連した事故の割合は2010年の20.9%から、2020年は21.9%へと上昇傾向にあり、交通事故件数が全体として減少傾向にある中で、自転車が関連している割合は減少していないことがわかります。
自転車は手軽な交通手段ですが、日常生活において事故に遭遇する可能性が高い乗り物といえます。
 
事故の内容
 同データによれば事故内容について、対自動車の事故が全体の8割を占めており、被害者の立場となる場合が非常に多いということがあります。2023年4月からヘルメットの着用が努力義務化されましたが、自転車利用中の事故による致命的なケガを防止するための有効な手段といえます。
 反面、2割を占める1万4,000件については、自転車同士の事故や対歩行者の事故など、加害者の立場になる事故内容となっています。
 
賠償額の傾向
 加害者の立場になると、相手方に賠償の義務を負うことになります。
その賠償金額も近年高額なものになっており、小学生が女性と衝突して頭に重傷を負わせた事故では約9,500万円、男子高校生が強引に車道を横断したところ対向してきた自転車とぶつかり、被害男性が言語機能を喪失するなどした事故でも約9,300万円など、1億円近い高額賠償判決が複数出ています。

 
2)マンション火災保険で対応できること、できないこと
 マンションにお住いの皆さんについても、自転車を利用する方であれば上記のリスクが存在しています。
リスクについてどのように考えればいいのでしょうか。
 
相手方に対する賠償
 ほとんどのマンションでは、管理組合が契約者となって共用部分に火災保険を掛けていると思います。
その契約の中に「個人賠償責任(包括)特約」あるいは「建物居住者賠償特約」などの項目で、日常生活に伴う事故により第三者に賠償しなければならない場合に備える特約があります。
この特約はマンション敷地内外を問わず、通勤通学を含む自転車の日常利用に伴う事故にも対応しており、被害者との示談を保険会社が代行するサービスを利用することができる優れものの特約と言えます。
 ただし、集金業務や商品の配送など、お仕事で自転車をご利用される場合は日常生活ではなく業務中の事故となるため、この特約の対象外になりますので注意が必要です。
 
自分が怪我をした場合
 では、ご自身が被害者の立場としてお怪我されたときはどうでしょうか。
残念ながらマンション共用部の火災保険商品ではご自身のお怪我には対応していないため、各自で傷害保険や生命保険の傷害特約などをご契約いただく必要があります。
 

3)より安心するために行いたいこと
管理組合加入契約の確認

 事故に備える特約が本当に安心できるものか、総会議案書にある共用部分火災保険の内容説明などから以下のチェックをされることをお勧めします。

・個人賠償責任保険特約が付帯されているか
 2019年の商品改定から、この特約を含めた過去の保険金支払いが保険更新契約の割引に影響するようになったことや、近年保険料が高騰していることを理由にこの特約の付帯を見送る組合様も存在します。
きちんと付帯されているかあらかじめ確認することが大切です。

・支払限度額はいくらか
 同様の理由で特約付帯はしているものの、支払限度額を物損事故に備える程度の金額に設定している組合様が一般的です。
いざという時に前述のような高額賠償事故となってしまい、限度額を超える賠償義務が発生すると、保険会社の示談代行サービスも使えなくなりますので注意が必要です。

・免責(自己負担)金額があるか、設定金額はいくらか
 最近は免責金額を設定してのご契約が増える傾向にあります。
特に5~10万円の高額自己負担での契約も散見され、思わぬ負担になることがありますので、ご確認ください。
 

4)まとめ
 確認の結果、共用部分の火災保険だけでは十分でないかもしれない。
と不安になってしまった場合はどうすればいいのでしょうか。
 個人(日常生活)賠償責任保険は、実はいろいろな保険の特約としてすでに加入いただいていることがあります。
自動車保険や火災保険、生命保険証券をご確認いただき、必要であれば中途での特約付帯が可能なものもありますので、ご加入の保険会社や代理店へご相談いただくことをお勧めします。
事故を起こさないことが一番大切ですが、その次にリスク回避の手段を事前に講じておくことが日ごろの安心につながります。