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2023.09.29

秋の台風シーズン到来!早期の復旧に欠かせない保険金の重要性




9月、10月は秋の台風シーズン。例年この時期には、各地に大きな被害をもたらすような強い勢力をもった台風が日本列島に接近しています。
さらに近年では、地球温暖化による気候変動の影響からか、台風や線状降水帯による豪雨が頻発化・激甚化しており、土砂災害などの被害が大きくなる傾向がみられます。
特にマンションのような集合住宅の場合、エレベーターや水道、電気、ガスなどのライフラインに関連する設備に損傷を受けたとしたら、住民は長い期間にわたり不自由な生活を強いられることになります。
今回はマンションでの水害事例を参考に、実際の現場対応や、その後の復旧における注意点などを考えてみましょう。



全市区町村の95%以上が過去10年間で水害を経験

日本では、毎年どこかで台風や大雨による「水害」が起こっています。全国にある1,741市区町村(令和元年末)のうち、平成23年から令和2年までの10年間に一度も河川の氾濫などによる水害が起きていないのは、わずか56市区町村(3.2%)。残り1,685市区町村(96.8%)では10年間に1回以上の水害が起きており、その半数以上の794市区町村(45.6%)では、10年間に10回以上の水害が発生しています。


(資料:国土交通省作成)

国土交通省作成 政府広報オンライン HP河川の氾濫や高潮など、水害からあなたの地域を守る、「水防」




上昇する水災関連保険金
 
台風や集中豪雨等の頻発化と激甚化にともない被害が増大していることは、水災による保険金支払いの増加という事実からも把握することができます。
 
損害保険料率算出機構のデータをもとに、一般社団法人日本損害保険協会が作成した「火災保険の自然災害による支払保険金」のグラフを見ると、2018年と2019年は、各地で大型台風が猛威を振るったことから、その被害を補う保険金の支払いが特段に大きくなっていることがわかります。



出典:「気候変動適応情報プラットフォームポータルサイト」(https://adaptation-platform.nies.go.jp/materials/e-learning/study/el-05_06_02.html?font=standard)(令和5年9月29日に利用)

出典:一般社団法人日本損害保険協会




2019年の台風19号による被害にあったマンションの事例
 
ここからは、2019年に発生し東日本に甚大な被害をもたらした「台風19号(令和元年東日本台風)」の影響を受けた、福島県内のある2つのマンションの事例を紹介します。マンション管理担当者(当時)の話をもとに、マンションにおける水害について考えてみましょう。
 
 
[Aマンション データ]
・おもな被害:1階共用部、外壁、分電盤、自動火災報知設備、エレベーター、インターホン、受水槽
 
[Bマンション データ]
・おもな被害:1階共用部、エレベーター(2機)、給水ポンプ、トランクルーム、インターホン
 
 
2019年10月12日、伊豆半島に上陸した台風19号は、中心気圧955hPa、最大風速は40m/sと大型で強い勢力に発達。その後、関東地方と福島県を縦断し、東日本を中心に猛威を振るいました。
 
13日午前0時ごろ、Aマンションの住民からの連絡を受けた担当者。それは近くを流れる川が氾濫し、マンションに備え付けてあった高さ1mの止水板を水が超えたという、緊迫した内容でした。
 
周辺の道路はすでに消防隊により封鎖されていることがわかり、1階には専有住戸もあったため、安否が心配されました。しかしメールを通じて管理組合の役員から「1階の住人は全員避難が完了していて無事」という連絡が届き、担当者は少し安心することができました。
 
一方でBマンションでは1階部分が完全に冠水しましたが、幸いにも1階に住戸はなく、人的被害は出ませんでした。
 
 
台風が去った翌日には、それぞれのマンションの被害の全貌が明らかになりました。いずれのマンションも、大量の雨水と汚泥ですぐに生活ができない状況であることは明らかです。管理会社は、まず除水のためのポンプを手配することから始め、水が引いた後に詳しい被害状況を確認しました。
 
 
Aマンションでは、共用部にあった分電盤やエレベーターなどの主要設備が、Bマンションでも、エレベーター関連設備や給水ポンプ等が完全に水に浸かり、それぞれ甚大な被害を受けていました。
 


万全の水災対策はしたいが…保険による備えの重要性
 
両マンションともにエレベーターピットに水が溜まり、完全に故障してしまったため、上層階への移動ができない住民は一時的に退去することを余儀なくされました。
 
その後Aマンションでは、比較的早期にエレベーターが復旧。修繕費用が保険金で全額カバーされたことで、スムーズな再建が叶いました。
 
一方のBマンションでは、エレベーターの復旧までに約半年の時間がかかってしまいました。
両者にこのような差が生まれた背景には、復旧に向けた方針の違いがありました。
 
早期の復旧を最優先としたAマンションに対し、これまでにも水災被害の経験があるBマンションでは、この機会にもう少し高いレベルで水災対策をしてはどうか、という意見が出たのです。たとえばエレベーターピットや分電盤などの電気設備を、水に浸かることのない高い位置に動かせないかといったものです。
 
Bマンションの管理組合は慎重に議論を積み重ねましたが、水災対策を充実させるための新たな工事を行えば、建物の維持に欠かせない大規模修繕工事のための修繕維持積立金を圧迫することにつながるなどの資金的な事情から、最終的にはAマンションと同じ、現状復旧を優先した修繕がBマンションでも行われました。
 
災害の経験を活かし、設備上の備えのアップデートを検討することは確かに重要ですが、用意できる修繕費用には限りがあります。だからこそ保険を活用し、被害の発生時にできるだけ速やかに復旧を目指すということが、現実的な対策であるといえるでしょう。被害にあった2つの組合が最終的には同じ方法にたどり着いたことからも、保険の活用は災害への備えを考える重要な視点だといえます。




繰り返しになりますが、日本のどこに住んでいようと、台風や集中豪雨による水災を完全に避けることはできません。
管理組合としてできること、それは
①ハザードマップでリスクを知ること
②設備の設置状況を把握すること
③危機に備える管理体制をつくること(24時間常駐/夜間無人/巡回管理など)
④居住者の生活状況の把握をすることといった、日頃からの備えを整えておくことです。
大和ライフネクストのマンション防災サービスの活用もぜひご検討ください。
 
加えて、
①土嚢・止水版の用意
②被災後の生活のための必要品のストックの用意
といった「モノ」の準備、さらには万が一大きな被害に見舞われたときに早期復旧に役立つ「カネ」の準備、つまり水害に備えた保険の準備も整えておきましょう。