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2022.11.24

【世界のマンション ~インド編~】 豪華なタワーマンションが建つ街

マンションの法制度

サステナビリティ

インド ──ひしめく高級タワーマンション

海外旅行が少しずつ始まっているようではあるが、コロナ以前のように気軽に行けるという訳にはいかない。旅行に行きたくてうずうずしているマンション関係者の方に、今回はインドへと思いを馳せる心の旅へとお連れするべく、インドのマンション事情についてお話ししよう。なお、本記録はコロナが流行する以前のものとなることをご承知おきいただきたい。

筆者が訪印したのは、2018年11月のこと。ニューデリーから南インド・バンガロール(現:ベンガルール)のマンションを取材したことがある。

まず、インドに分譲マンションはあるのか?という疑問があるだろうが、その答えは「ある」。しかも日本企業も進出しマンションを分譲しているのだ。

インドはいわずと知れたカースト制がいまだに強く残る国であり、マンションを購入する人は、やはりカースト制度では上位に位置する人々となる。しかし当時のバンガロールは若干事情が異なっていた。

カースト制度は職業によって細かい規定がある。しかしこの中に「IT技術者」という分類がないため、才能と努力次第ではカースト制に縛られることなく、成功することができる。バンガロールはIT関係企業が多く、こうした成功者が集まる都市であるのも大きな特徴だ。
カーストの上位者、そしてIT技術者、こうした人々をターゲットにしてバンガロールには高級タワーマンションがひしめいていた。

これらのタワーマンションは、日本のタワーマンションよりさらに贅沢を極めている。プールやジャグジー、テニスコートなどは当たり前であり、ボーリング場まである。平日の日中だったこともあるが、どの施設も誰も利用しておらず、ひっそりとしていた。

高級ホテルのようなプール

スポーツジムさながらのフィットネススタジオ

インドのマンション管理

ではマンションの管理はどうなっているのだろうか。

インドでは「修繕積立金」という概念はないそうだ。一方で「管理費」の概念はあり、所有者は月々、管理費を管理者(管理会社)に収めている。この管理者が清掃会社、植栽会社などを手配し、それぞれの会社から労働者がやってくる。管理者に「今日はマンション全体で何人の人が働いていますか?」と聞いてみたところ「それぞれの会社からたくさんの人がきているはずだ」という回答であった。

芝生の手入れをする庭師

なぜか裸足の清掃作業員

こうしたマンションで働く労働者は、高級マンションに近接する街からやってくる。高級マンションとスラムともいえる街が近接しているため、高級マンションが彼らの働き場所となっているようだ。

ゴミの回収の様子

スラム街からタワーマンションを望む

では、修繕が必要になった場合はどうするのかというと、やはり一時負担金を徴収するのだという。
取材時に日本の修繕積立金について説明したが、「売買の際に返却するのか」「途中で購入した人からどのように徴収するのか」などの質問が相次ぎ、理解を得ることはできなかった。

こちらからは一時負担金を支払えない人がいたらどうするのかを聞いてみたが、工事費用が支払えればよく、未収金に関してはあまり気にしていないようでもあった。国民性だろうか。
 

インドの建て替え

タワーマンションが老朽化したら──これまでに分譲されたものの中で、小規模のマンションはどうしているのかという疑問に対する答えは「不要になったら壊せばいい」とのことであった。

日本と同様にタワーマンションの建て替え事例はないそうだ。日本の高度成長期のようなスクラップ&ビルドの思想は根強いようである。
 

日本のマンション事例を世界に

日本でマンション管理に関わっていると、高齢化、高経年化などの課題が山積みで、明るい未来が見えてこない時がある。
しかし、こうして諸外国に目を向けてみると、日本のマンション管理には長期修繕計画があり、修繕積立金の制度があり、社会全体で建物の長寿命化に取り組む姿勢があり、また、少しずつではあるが建て替えの成功事例が増えてきている。これから発展途上国のマンションが日本のマンション事情と同様の状況に置かれた時、日本の事例が最善の解決策として世界に紹介されるようになりたいものだ。

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この記事の執筆者

久保 依子

マンション管理士、防災士。株式会社リクルートコスモス(現株式会社コスモスイニシア)での新築マンション販売、不動産仲介業を経て、大和ライフネクストへ転籍。マンション事業本部事業推進部長として主にコンプライアンス部門を統括する傍ら、一般社団法人マンション管理業協会業務法制委員会委員を務める。

久保 依子

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