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2021.7.27

令和2 年度
厚生労働科学研究費補助金(認知症政策研究事業)
独居認知症高齢者等が安全・安心な暮らしを送れる環境づくりのための研究に関する分析の委託

高齢化社会

独居認知症高齢者等が安全・安心な暮らしを送れる環境づくりのための研究に関する分析の委託

1. 研究目的

 地域包括ケアの充実のためには、高齢者を取り巻く地域特性を把握し、多様な主体が連携できる体制づくりが必要である。本調査研究では、前年度の板橋区に引き続き、東京都足立区を対象に、戸建て住宅、分譲マンション等の住居形態別の高齢者分布、独居などの推計を行うと共に、当該地域の災害リスクや医療体制、日常生活上のアクセシビリティなどの状況分析を加えた。
 また、2015年に足立区で実施されたアンケート調査データ※による分析も加味し、戸建て住宅や分譲マンション等の特性・課題を検討した。

※「平成27年度 足立区介護予防チェックリスト」調査データ
 介護予防の推進及び認知症高齢者対策に資する健康調査を実施し、身体・精神・社会的機能を含む総合的な状態把握、認知症に対する区民の意識を調査することにより、足立区の実情に即した介護予防及び認知症対策を推進するもの。足立区内に在住で、平成27年4月1日現在65歳以上の区民のうち、要介護認定を受けていない全員134,392 名を調査対象とした悉皆調査である。以下「足立区2015年調査データ」とする。

2. 研究方法

 足立区における高齢者分布を詳細に把握するため、国勢調査データに民間会社のデータを加えたハイブリッドデータ評価法による推計を行った。また、高齢者を取り巻く地域特性を把握し、高齢者分布との関係から分析を行った。さらに足立区2015年調査および介護認定データの結果を加えて、住居形態との関係を把握した。

[分析項目]
1. 住居形態別の高齢者分布の推計
2. 高齢者を取り巻く各種リスクの把握
3. 足立区2015年調査データを用いた住居形態との関係分析

3. まとめ(特記事項の抜粋)

 「3」においては、「1」の住居形態の推計結果に、居住者の意識や社会福祉上の課題についての相関の分析を行った。(以下、報告書から一部抜粋)
 


●住居形態と「近所の人に対する信頼感」の関係
 戸建て住宅やアパートが多い地域は、近所の人に対する信頼感にプラスの相関が見られた。一方で、分譲マンションや賃貸マンションが多い地域はマイナスの相関が見られた。(報告書33頁以降)
(有意確率5%で検定)
 


●要支援・要介護認定と住居形態の関係(図2参照) 
 分譲マンションと賃貸マンションの多い地域では、要支援および要介護認定率が低下し、団地・寮・社宅が多い地域では、認定率が上昇する傾向がみられた。これらの住宅は、その多くが鉄筋コンクリート等の共同住宅であることを考えれば、認定率の傾向は同様となることも考えられる。公営団地等では社会福祉の手が届きやすく、マンションには届きにくい構造があるとも思われる。(報告書40頁以降)
(有意確率5%で検定)
 


この論文の執筆者

大和ライフネクスト株式会社 マンションみらい価値研究所 田中 昌樹

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