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2020.9.23

知らないと損!ややこしい「専有部分」と「共用部分」の区分け

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区分所有建物であるマンションには、大きく分けて「専有部分」と「共用部分」という2つの区域がある。それぞれの領域によって、区分所有者の責任と負担は異なる。ましてや「共用部分」には、「専用使用部分」という特定の区分所有者が排他的に使用する部分もある。この区分けがしっかり理解できていないと、対象の箇所が壊れた場合など、自分の負担で直すのか、それとも組合の負担になるのかといった判断がつかないことになってしまう。

今回は今一度、マンション内の「専有部分」と「共有部分」について考えてみる。

答えられる!?「専有部分」・「共用部分」・「専用使用部分」

マンションで暮らす以上、的確にそれぞれの部分が「専有部分」なのか、「共用部分」なのか、「専用使用部分」なのかを知っておくべきではないだろうか。果たしてあなたは大丈夫だろうか?自分の部屋の中が専有部分、それ以外が共用部分……という単純なものではない。

そこで、マンションの部分を「専有部分」、「共用部分」、「専有使用部分」に分ける問題にチャレンジしてみよう。さて、どれがどの部分に当てはまるか考えてもらいたい。
☐ インターホン
☐ 玄関ポーチ
☐ 室外機置場
☐ バルコニー
☐ 窓ガラス・網戸
☐ 室内の火災感知器
☐ 玄関扉
☐ 給水配管
管理規約によって異なる場合もあるが、正解はすべて「共用部分」。しかもこの中には、「専用使用権が認められた共用部分」、いわゆる「専用使用部分」となる「共用部分」も多くあるので、混乱しやすい。また、あるところまでは共用部分だが、あるところからは専有部分になるというものも含まれている。

では、簡単に解説しよう。

専用使用部分が一番“厄介”

オートロック付きのマンションでは、専有部分に設置してあるインターホン子機とエントランス側の親機が連動している。来客時にはマンションのエントランスの鍵を開ける、また留守の時には録画などで訪問者を記録できるものだ。親機本体と居室内に置かれている子機が連動して機能するもので、一体不可分の設備となる(オートロックが付いていなくて、部屋の玄関前にその部屋だけの呼び出し用のインターホンのみの場合は、専有部分とされているケースもある)

玄関ポーチや室外機置場・バルコニーは、その住戸が排他的に使用できる箇所。しかし、個人的な物置を設置するなど、自由自在に使っていいとは認められていない。特にバルコニーは避難経路でもあるため、避難ができないような物の設置はもってのほか。いざという時にマンション内に住む全員の人命に関わるからだ。まずはもう一度お住まいのマンションの使用細則に目を通して、現在の使い方で間違っていないかを確かめてみて欲しい。
窓ガラスや網戸も同様だ。割れ難いガラスにしたい、断熱性の高いペアーガラスにしたいなど、防犯や省エネという合理性があったとしても、居住者が勝手にリフォームを行うことはできない。マンションによっては、施工上の技術水準や施工方法などの条件を定め、理事会に申請するなどすれば可能となる管理規約などを用意している場合もある。ない場合は、規約の見直しが必要になる。
消防設備点検で、点検者が室内の天井に、長い棒のようなものを当てる光景を見たことがあるだろう。長い棒とは「支持棒」(別名:あぶり棒)という。そして先端にはベンジンを燃やした熱源が入っていて、熱であぶって感知器が反応するかどうかを点検する。住戸の火災などで、感知器が熱を感知すると信号が管理事務室などの警報盤などに信号が行き警報機も鳴りだす。住民全体に避難や初期消火を促すためだ。マンション全体の安全のためにも、火災感知器は共用部分ということになる。リフォームの際に勝手に撤去したり移設したりしてはいけないものなのだ。

玄関扉は、鍵や扉内側の塗装部分は専有部分だが、その他の部分は共用部分になる。勝手にドアを交換する、またペンキで色を変えてしまうと、マンション全体の外観の統一性や美観を損なうことになってしまう。つまり、そんなことはやってはいけないというということだ。

給水配管では、水道メーターから部屋側の配管は専有部分。簡単に理解するなら、竪管(たてかん)は共用部分、横管は専有部分ということになるだろう。あるところを起点に専有部分になるという類のものなのだ。

共用部分の使い方と費用負担

マンションは、多くの人々と生活を営む共同住宅である。一見すると専有部分のように思えても、その機能や目的、費用負担先の合理性に基づいて考えていかなくてはならない。

専有部分とは、「区分所有権の目的たる建物の部分」、要するに自分だけが支配できる家の中の部分となるのだが、室内の天井や壁・床も、表層の壁紙やカーペットまでであり、コンクリート部分やスラブ、また火災感知器などは、実は共用部分なのだ。また、共用部分であっても、ある特定の人だけが使用することができる部分を「専用使用部分」という。

さて、これらの部分に対する区分所有者の責任と負担について考えてみよう。

自身の部屋をリフォームする場合、その費用は当然のことながら自己負担である。一方、共用部分の補修・修理は、管理組合がその責任と負担において行わなければならない。ならば共用部分でもある専用使用部分の補修・修理費用は「管理組合が負担する」とは、一概に言い切れない。

専用使用部分の補修については、「通常の使用に伴う場合には、専用使用権を有している区分所有者が負担する」と管理規約に規定されているマンションは多い。(標準管理規約第7条第2項第3号、第14条第1項、第21条第1項ただし書参照)

自分の不注意で壊した時だけ、自分で直せば良いというだけではない。本人にとって普通に使っていたとしても、通常使用する者の負担で直すということになる。
実はこの「通常使用」という解釈が難しい。マンションの集合ポストを例に挙げよう。「自分の郵便受けの鍵がかからなくなってしまった!しかし故意に壊したわけではない上、共用部分なので管理組合の負担で修理してもらえるか」という話になるとしよう。回答“否”だ。ポストを開け閉めする頻度は人ぞれぞれ。集合ポストのすべての鍵が一斉に壊れていたわけではない。自分以外はこの鍵を開けないため、「通常使用」とみなし、ポスト鍵の交換は自己負担ルールとなるのだ。

こんな時、責任を取るのは誰なのか?

もしあなたが、防犯対策のために玄関扉にもう一つ鍵を付けて二重ロックにしたとする。共用部である玄関扉に、管理組合の許可なく無断で鍵を取り付けたことになり、原状回復するようにと言われてしまったというケースだ。防犯の必要性や合理性を踏まえても、管理規約等で「個人での二重ロックの設置を認める」云々の管理規約などがない以上、やはり原状回復しなくてはいけない。

また、こんな話が管理会社の担当を悩ませることもある。「Aさんの窓ガラスは組合負担で交換してあげたと聞いた。うちは網戸に穴が開いた時は自費で張り替えたのに!」というクレーム電話だ。実は、Aさんの窓ガラスは、台風被害で割れたもの。「通常の使用」によるものではなく、管理組合の責任と負担において修理したわけだ。網戸に穴が開いて張り替えたというのは、「通常の使用」にあたる。まさに個人負担となるのだ。

漏水問題でも同様。よく漏水の原因住戸の方は、「共用配管が原因での漏水なのに、うちが悪いの?」という話になりやすい。調査の結果、専有部分の配管が原因であれば、当然、賠償責任はその配管の所有者となる。ただし、調査しても原因箇所がわからない場合もある。区分所有法第9条の「建物の設置又は保存の瑕疵に関する推定」では、原因(箇所)がわからない場合は共用部分が原因とみなし、管理組合の負担となる。(区分所有法第9条:建物の設置又は保存に瑕疵があることにより他人に損害を生じたときは、その瑕疵は、共用部分の設置又は保存にあるものと推定する)

ここだけは最低限押さえておこう

専有部分に起因する被害は自己責任である。専用使用部分は、劣化等による補修は組合、日常使用で壊した時は自己負担。どういう場合であれば組合負担となるのか、自分が責任を負うことになるのか、あらかじめ理解しておくことは大切だ。そのためには自分のマンションの管理規約で、共用部分・専用使用部分の範囲やルールを確認しておくこと。そして何か困ったことになった時は、あらためて管理会社に相談していただきたい。

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