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2026.06.01

労災上乗せ保険の必要性

 



労災上乗せ保険は、従業員が業務中に被ったケガや病気に対する補償を強化するための保険です。政府の労災保険だけではカバーできない部分をサポートし、事業者と従業員の双方に安心感をもたらすことが期待されています。特に中小企業にとっては、予期せぬ労災事故が経営を揺るがすケースもありますので、労災上乗せ保険はそのリスクを軽減する重要な手段の一つです。また、従業員にとっては、万が一大きなケガをした場合に経済的な負担を軽減する補償が準備されていることで、安心して業務に専念することができます。
 
このように労災上乗せ保険は、事業者と従業員にとってメリットのある保険といえますが、日本損害保険協会が中小企業を対象に行った調査によりますと、労災上乗せ保険の加入率は22.6%にとどまっており、約8割の中小企業が未加入というのが現状です。このコラムでは、このような実態を踏まえ、労災上乗せ保険の必要性を政府労災の内容とともにご案内いたします。

 
【目次】

  1. 1.労災上乗せ保険への加入実態と中小企業が抱える労災リスクの現状
  2. 2.労災上乗せ保険に加入しない理由
  3. 3.労災上乗せ保険が守るもの
  4. 4.まとめ
 
  1. 労災上乗せ保険への加入実態と中小企業が抱える労災リスクの現状

 
一般社団法人日本損害保険協会が2025年に中小企業向けに実施した調査によりますと、労災上乗せ保険に加入していると回答した企業は全体の22.6%となっています。


(出典:一般社団法人日本損害協会 中小企業におけるリスク意識・対策実態調査2025 調査結果報告書 をもとに大和ライフネクスト株式会社保険推進部作成 ※労災上乗せ保険は業務災害補償保険の名称で記載されています。)

このことから中小企業の約8割が労災上乗せ保険に未加入であり、業務災害が発生した場合には政府の労災保険で対応していることがわかります。
業種別での加入状況を見てみますと、建設業の加入率が44.8%と最も高く、サービス業、卸売業・小売業がいずれも10%台であり、業種別に加入実態が大きく異なることがわかります。

実際の労働災害の発生状況はどのようになっているのでしょうか。厚生労働省が公表している「令和6年の労働災害発生状況」を見てみましょう。
資料によりますと、令和6年の労働災害による死亡者数(新型コロナウイルス感染症へのり患によるものを除く)は746人(前年比9人減)で過去最少となっている一方で、休業4日以上の死傷者数は135,718人(前年比347人増)と4年連続で増加しています。




(出典:厚生労働省 令和6年 労働災害発生状況について)
https://www.mhlw.go.jp/content/11302000/001543320.pdf


休業4日以上の死傷者数は業種別でも公表されています。製造業が26,676人(対前年比1.9%減)、商業が22,039人(同1.7%増)、保健衛生業が18,867人(同0.4%増)となっており、製造業では減少している一方で、危険作業が中心ではない業種においても事故件数が増加しているケースが見られます。
事故の型別では、件数の多い順に、「転倒」が36,378人(前年比320人・0.9%増)「動作の反動・無理な動作」が22,218人(同165人・0.7%増)、「墜落・転落」が20,699人(同59人・0.3%減)となっています。
このうち「転倒による骨折」は60歳以上の女性に多く発生している傾向があります。特別な作業を行わない職場であっても「転倒」は起こり得るため、床の清掃や適切な照明の確保など、職場環境の安全性を確保しておく必要性があります。




(出典:厚生労働省 令和6年 労働災害発生状況について)
https://www.mhlw.go.jp/content/11302000/001543320.pdf

 

2.労災上乗せ保険に加入しない理由


一般社団法人日本損害保険協会の調査によりますと、労災上乗せ保険に未加入の企業のうち29.8%が、未加入の理由を「リスクが発生する可能性が低いと考えているため」と回答しています。
確かにデスクワーク中心の職場であれば、危険作業を伴う企業と比較して労働災害が発生するリスクは低いといえそうです。しかし、厚生労働省のデータにあるとおり、いずれの職場にも潜む「転倒」事故が増加している現状や、昨今増加しているメンタルヘルスなどへの対応を考慮すると、今後は労災上乗せ保険の必要性に対する認識がこれまで以上に高まっていく可能性があります。
 
※参考資料 一般社団法人日本損害保険協会 「中小企業におけるリスク意識・対策実調査2025調査結果報告書」
https://www.sonpo.or.jp/sme_insurance/assets/pdf/survey/sme_report2025.pdf




(出典:厚生労働省 令和6年度「過労死等の労災補償状況」)
https://www.mhlw.go.jp/content/11402000/001508121.pdf

 

3.労災上乗せ保険が守るもの

 
政府労災は労働者災害補償保険法により、原則として、労働者を使用するすべての事業者に加入が義務づけられています。業務上の事由または通勤による労働者の負傷等(業務災害/通勤災害)に対して給付が行われ、その主な給付内容は以下の通りです。

療養(補償)給付・・・必要な療養を給付
休業(補償)給付・・・休業1日につき給付基礎日額の60%を支給 
障害(補償)給付・・・障害が残った場合に年金又は一時金を支給
遺族(補償)給付・・・遺族に対し年金又は一時金を支給
※給付基礎日額・・原則として、給付事由発生日以前の直近3か月の平均賃金
(出典:厚生労働省HP 労災補償の的確の実施)

このほか、4日以上の休業の場合は休業特別支給金20%が支給されます。
政府労災は労働者や遺族の生活を守るための公的保険であり、自己負担なく療養を受けられる点から、補償内容が充実していると思われる方もいらっしゃるかもしれません。
 
しかし、補償内容については、いくつか注意すべき点があります。
まず知っておきたい点は、労災保険の給付項目には「慰謝料」(精神的損害)が含まれていないということです。
労災事故が発生した場合に、企業が従業員の命や健康を守るべき義務を怠ったと認められた場合には、企業は民事上、損害の賠償責任を負うことになります。損害賠償の費目には精神的苦痛に対する慰謝料が含まれますので、その分は企業の自己負担となります。
また休業補償につきましても、政府労災の補償は休業特別支援金を加算しても本来の賃金の80%にとどまります。満額の支給ではないため、生活費への影響が生じる可能性があります。特に休業期間が長期になるほど家計への影響が大きくなり、無理をして早期に職場復帰をしてしまうリスクがあります。
 
こうしたリスクに備えるのが労災上乗せ保険です。政府労災でカバーしきれない部分を補完することで、事業者にとっては経営リスクの軽減につながり、従業員にとっては万一の際の安心感を高めるという、双方にメリットのある制度といえます。
 
まず事業者観点では、労災上乗せ保険は「企業防衛」に役立ちます。政府労災とは別に、保険金を弔意金や見舞金として遺族や従業員に支給することで、「企業の誠意」を示すことが可能です。重大な事故が発生した場合でも、損害賠償請求を未然に防ぐための手段として有効に働くことがあります。
また、使用者賠償特約を付帯しておくことで、実際に訴訟となった場合でも、損害賠償額を保険でカバーすることができ、経営への影響を最小限に抑えることができます。
 
一方、従業員の視点からみても、企業がコストをかけて事故時の補償を手厚くしていることや、休業時の補償によって治療に専念できる環境が整うことで、仕事に従事することへの安心感や事業主への信頼感の向上につながります。

 

4.まとめ

 
労災上乗せ保険の必要性をご案内してきましたが、労災上乗せ保険にはさまざまなタイプがあります。損害保険会社ごとに特色があり、補償の内容を充実させるオプションも多数用意されています。検討にあたっては「重大な事故の際の高額賠償に備えたい」「軽微な事故が多発しているので対応したい」「メンタル不調者の発生に備えておきたい」など、自社が特にカバーしておきたい点を明確にしたうえで、保険会社や代理店に相談しましょう。
 
大和ライフネクストでは、複数の保険会社の中から、企業ごとの特性に応じて労災上乗せ保険をご提案することが可能です。どのような商品があるのか資料だけでもご覧になりたいという方は、お気軽にご依頼ください。