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2022.3.29

マンションの修繕コストが上昇!どうする管理組合!?

長期修繕計画

マンションの修繕コストが上昇!どうする管理組合!?

昨今、原油や半導体・鉄までも品不足が続いている。建築材料である生コンやウレタンまでも価格高騰し、建築業界では頭を抱える問題になっている。
原因はさまざまだろうが、世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルスの影響も大きいだろう。

身に迫るはなしでは、給湯機がある。建築材料ではなく住宅設備ではあるが、海外からの部品の供給が滞り品薄が続く状態になった。2021年末には、本格的な冬を迎えるにあたり給湯機が故障したら大変だ、というニュースも記憶にも新しい。工場の操業停止、また輸出入などロジスティックスの麻痺、そして輸送コストの高騰などが建築材料と同様に住宅設備にも波及している。

この価格高騰は、新型コロナウイルスが収束したら品薄が解消され価格も落ち着くのかというと、私はそう簡単には元には戻らないと考える。

 

建築材料の高騰だけではない、人件費の現状

建築業界は東京オリンピックの建築ラッシュですでに人手不足に陥っていた。材料費だけ でなく、人手不足のダブルパンチで、これまでにない工事費の高騰に至っている。もちろん、新築工事だけではなく、マンションの修繕工事も同じ状況だ。

国土交通省が発表している建築工事費デフレータを見れば一目瞭然。

2011年の指数95.1と比較すれば2020年度は107.3。約1.13倍になっている。東日本大震災以降の2011年からの10年間、工事費は上昇し続けているのだ。

※国土交通省建設工事デフレータ<住宅総合>より当方にて作成。指数は2015年度を100としている。

国土交通省建設工事デフレータ

さらに、建築業従事者数の高齢化も追い打ちをかける。

平成28年段階で、建築業の従事者の年齢は、55歳以上が33.9%と従事者全体の1/3を占める。一方で29歳以下が11.4%と全体の1/10程度と少なく、全産業と比較しても高齢者の比率が高い。(国土交通省_建築業及び建築工事従事者の現状より)

また、建築業の賃金推移を見ると、2012年から2017年の上昇率は14.7%と、賃金が上昇し続けている。(国土交通省_建築業男性全労働者等の年間賃金総支給額の推移)

数年前まで建築業の現場で活躍していた管理組合の理事の方が、工事見積の明細を見て作業員の経費が高すぎるという印象を持つことも多い。この数年間の人件費の上昇は、従来の相場感が通用しないほどなのだろう。

そんな理由から、新型コロナウィルスが収束しても、建築材料に限らず人件費も下がる見込みが薄く、そう簡単には建築費が安定するとは思えないのだ。

工事費の安定まで、工事を先延ばしするべき?

この高値水準が続く中で、大規模修繕工事などを行うべきか、将来工事費が下がるタイミングを見計らって工事を実施するべきか、正直悩む話だろう。

しかし、劣化がより進行した結果、施工範囲が広がる、またはよりコストがかかる施工方法に変更せざるを得ないことにもなりかねない。例えば、鉄部でいえば、塗装で済んだものが、錆などの進行により穴が空いてしまったりすると、そっくり取り換えが必要になるなどだ。

この先、コストは安定すると楽観的に考えたいところだが、高止まりが続くどころか、上昇してしまうことも十分あり得るだろう。

修繕工事は、劣化状況を確認した上で、適時に実施するのが基本だと考える。また、昨今のコスト上昇基調の中で配慮しておきたいの下記の3点だ。
① 修繕工事の必要性やタイミングを定期的に精査する
② 施工方法や範囲をしっかり押さえる
③ 物価上昇などを盛り込み資金計画を見直す
いうなれば、長期修繕計画の“見直し”は欠かせないということだ。
将来を見据え多角的視点で自分たちのマンションに向き合う。そして、最善の策をたてることが求められるのだ。

そもそも長期修繕計画がない、もしくは10年・20年と見直しもしないままというケースも多いはずだ。そんなマンションでは、まず手始めに簡易に使える“長期修繕計画シミュレーション”を活用してみるのも手だろう。

もう一つの注意点:施工会社を正しく選ぶ

このような状況下でも、安く工事を請け負う会社も出てくることは容易に予想できる。しかし、工事コストは上がるべくして上がっていることは忘れてはいけない。

工事が始まって調査してから費用が増減する実数精算方式で契約する場合、補修箇所の数量の捉え方が異なり、数量精算時点で他社と変わらない金額になってしまうケースもありえる。単価や数量、材料など条件を同じにして見積を取るのは定石だが、工程ごとの施行期間や作業員の人数など、管理組合はしっかりヒアリングする必要もある。いわば、発注者としてのプロの領域を求められるということだ。

もちろん、マンション改修工事のプロが理事の中に仮にいらっしゃったとしても、それに関わる時間と労力は並大抵のことではないのも事実だろう。

そのために選択肢の一つに入れるべきは、標準仕様書の作成や各社の見積明細を精査するのが施工会社選定補助という改修工事のコンサルタント。工事監理だけでなく、この段階から外部ブレーンを活用するのも一つの方法だろう。

また、マンション改修工事とは、人が住んでいる中で行われる工事。例えば、消防設備と連動するようなインターホンの更新工事では、工事を実施できない住戸があれば消防設備として他の住戸に火災を報せることができなくなくなってしまう恐れもある。居住者の在宅調整が最も重要な工事ともいえる。

外壁の工事では、バルコニーに出られない、窓を開けられないなど生活上の利便性も阻害される場合もある。わかりやすい告知も大切だし、騒音や防犯面・安全面なども十分な配慮が求められる。

屋上防水工事では、一般的には、施工後おおよそ10年程度、漏水等の保証が付く。しかしながら、請負会社と管理組合の関係も施工タイミングだけとなりやすく、対応が遅れるケースもある。いざ問題が発生した時、その施工会社が廃業していたら、保証も絵に描いた餅になってしまうのだ。

当たり前なことだが、単純にコンサルタントを入れて、相見積もりをして、工事金額を安くしろと言っているわけではない。信頼のおける施工会社や監理者をつけることで初めて工事金額に見合った品質が得られることを忘れてはいけない。管理組合やお住まいの方の立場に立てる信頼できる施工会社を選び、単なる見積合わせであっては意味はないのだ。

今は検索すると様々な情報を得ることができる時代だが、都合の良い情報だけ集めても意味はない。工事費の高騰や人件費の値上げ、建築業従事者の減少等、正しく現状を理解した上で、また人が住んでいる中での改修工事であることも肝に銘じ、安心できる工事を行いたいものだ。

まずは、長期修繕計画の見直し作業を通して、そのあたりを管理組合全体で理解していくことをお勧めする。

長期修繕計画シミュレーションはこちら
 

この記事の執筆者

佐野 裕衣

一級建築士、マンション管理士。2017年大和ライフネクスト入社。マンション修繕コンサルタントとして管理組合サポートを行う。現在は管理組合に向けたサービス開発に従事。

佐野 裕衣

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